2021.11.05 「地方でつくるグリーン」ポイント水素テーマにシンポジウム
シンポジウムでは活発な意見が交わされた
エネルギーの現状などを議論する「第26回新時代のエネルギーを考えるシンポジウム」が5日、東京都内であった。脱炭素化の潮流が進む中、英国・グラスゴーでは世界が注目する国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が開催されている最中。シンポジウムでは、運搬や貯蔵面からモビリティー利用などで注目される水素に着目し、エネルギー業界の関係者や学者らが意見を交わした。
石油元売り最大手のENEOS(エネオス)や、NHKエンタープライズなどでつくる実行委員会が主催した。
今回のテーマは「脱炭素社会の未来像 カギを握る〝水素エネルギー〟」。NHK解説主幹を務める関口博之氏をコーディネーター役に、保坂伸・資源エネルギー庁長官、前田昌彦・トヨタ自動車執行役員、高村ゆかり・東京大学未来ビジョン研究センター教授ら6人がパネリストとして並んだ。
脱炭素、欧州との違い
10月に閣議決定した第6次エネルギー基本計画では、30年の電源構成に水素が初めて盛り込まれた。エネルギー行政を担う保坂長官は、世界をけん引する欧州の脱炭素化の動向について「欧州と決定的に違うことが一つある。欧州は二酸化炭素(CO₂)を出さないことを目標にしている。だが、我々はCO₂を出すかもしれないが、カーボンニュートラルのために、場合によってCO₂をマイナスにする技術も含め全体を考えている」と説明した。
日本企業には水素を本格的に調達する動きも出始めている。会場では、日本企業がオーストラリア南東部のビクトリア州で進めるプロジェクトが動画で紹介された。同州にある世界最大規模の炭鉱では、水分を多く含み低品質で使い道が限定された褐炭が豊富に埋まる。価格の安い大量の褐炭から、川崎重工などの企業連合が、水素を製造する実験を始めている。
水素を高熱でガスに変え、そこから水素を採取する。石炭のガス化は、日本が長年、石炭火力発電を高効率化するために培ってきた技術だという。排出されるCO₂は分離回収して海底下に貯留するCCS技術と組み合わせてCO₂フリー水素を生産する。こうした水素は、ブルー水素と呼ばれる。
洋上風力と組み合わせ
一方、再生可能エネルギー由来の電力で水を電気分解してつくるのが、グリーン水素だ。シンポでは、佐々木一成・九州大学水素エネルギー国際研究センター長が、グリーン水素のポイントを2点挙げた。「中東など海外で再エネの価格が安くなる地域が出てくる。安い再エネを使って大量にできた水素を、海外から供給できる」とし、さらに「国内では地方で実際に再エネ余りが起こりつつある。九州などでは出力抑制がされる。地方の再エネをうまく使った水素をモビリティーなどに利用すれば価値が出てくる」と指摘した。高村教授も「これから増やしていく洋上風力の発電地域では水素とのカップリングが良いのではないか」と語った。
また、ブルー水素をつくるためのCCS技術について、岩瀬淳一・エネオス取締役副社長執行役員は「CO₂をネガティブにする方法としてもポテンシャルがある。大気中から回収してCO₂を減らす分だけ、一定の化石燃料を有効に使える方法として考えると、決して過渡期だけで終わらせるのはもったいない」と語った。