2021.11.23 東急パワーサプライ、公共交通インフラに再エネ供給CO₂フリーバス停、再エネ列車運行
東急バスの停留所
東京・世田谷、生活者に啓発
東急グループの新電力、東急パワーサプライ(東京都世田谷区)が、グループの公共交通インフラを活用して地域に再生可能エネルギー電力を導入する事業を進めている。今月、グループの東急バス(同目黒区)の停留所を二酸化炭素(CO₂)フリーにすると発表した。本社のある世田谷区内の主要なバス停留所が対象。既に区内の鉄道路線で、国内で初めて再エネ電力だけで列車運行を継続するなど、生活の身近なインフラで活用を広げている。
東急パワーサプライは2016年4月に電力小売事業を始め、関東地方の一般家庭を中心に電力供給している。東急電鉄(同渋谷区)の定期券などを絡めた割引料金プランを売りに、鉄道沿線を中心に契約者を拡大。3月末時点で、電気とガスの供給を計44万世帯が申し込んでいる。
世田谷区は、区内全体で再エネ利用拡大を目指す「せたがや版RE100」などに取り組む。05年まで神奈川県三浦市に、ぜんそくなど健康に不安を抱える区民の子どもたちが海沿いの豊かな自然の中で学べる区立の教育施設があった。区は14年、その空き地に「みうら太陽光発電所」を建設。発電した電力を再エネ固定価格買い取り制度で売電してきた。
だが、区内で活用しようという機運が高まり、せたがや版RE100の一環として電力の活用方法を民間に募ったところ、同グループの利用案が採用された。バス停事業について、区エネルギー施策推進課の担当者は「住民たちに広く再エネ利用の意義を啓発するのが目的だ」と話す。
同発電所は敷地約8700平方メートルにパネル約1680枚が並び、20年度実績で年間約49万6000kWhを発電した。これは一般家庭約160世帯分の使用電力に相当する。今回の事業では、同発電所の電力に非化石証書を組み合わせて実質再エネ100%を実現する。
東急バスは年間延べ約1億5000万人を運ぶ大手。供給するのは、多くの路線が集中する世田谷通り沿いを中心とした区内50カ所の停留所だ。11月から順次供給を始め、夜間などに路線の行く先案内や時刻表を照らすライトなどに使う。バス停にはステッカーなどを貼り、利用者に広くPRする。こうした規模でバス停の電力が再エネに切り替えられた例は、国内ではないという。
また、同グループでは19年3月から、区内を走る東急電鉄・世田谷線の全列車を、再エネ100%電力で運行している。10駅が約5キロメートルに並ぶ短い路線だが、1日平均約5万8000人が乗り降りする。東北電力と協力し、地熱発電所や水力発電所の電力を活用。東急パワーサプライは東北電力の取次事業者として参画している。
東急パワーサプライでは「区内の生活者にとって身近な交通インフラであるバスの停留所をまず再エネで賄ってPRし、身近なところでの再エネ活用や環境社会の必要性について実感してもらいたい」とする。
みうら太陽光発電所の電力は、年間約3000万人が訪れるショッピングセンター「二子玉川ライズ」や、年間約6万人が来館する「五島美術館」といった区内の施設にも供給。来場者らに認知を高めてもらう考えだ。