2021.11.25 【空質商品特集】IAQ機器の提案重視コロナ禍で空気質の関心高まる
エアコンにも換気機能搭載などIAQ向上に向けた性能が進化
ニューノーマル(新しい日常)な生活が浸透し、在宅時間が増えたことで、室内の空気質に対する関心は高まっている。IAQ(インドア エア クオリティー)向上に向けたさまざまな機器は、このところ好調な推移を見せ、新型コロナウイルス感染症が拡大した昨年度の場合、ルームエアコン、空気清浄機はともに過去最高の出荷台数を記録した。空気質に対する関心は今期以降も持続すると見られ、IAQ機器の提案がより重要となる。
コロナ禍によりテレワークの普及などニューノーマルな生活が浸透し、今後人々の暮らしは、コロナ前の状況には戻らないという見方は多い。
こうした中で、IAQに絡む機器への関心も高く、室内の清潔、健康、快適といったニーズに応えるための、さまざまな機能や商品開発が活発となっている。
パナソニックは、屋内の空気質に対する重要度はこの一年で従来と比べどう変化したかをユーザーに聞いたところ、65.3%が「ここ1年で重要になった」と答えている。
また、ダイキン工業が定期的に実施している空気感調査(2021年11月)でも、在宅時間が増加していることに伴い、自宅の空気に息苦しさやよどみを感じると答えた人が68%に上る。特に20代、30代と若年層の方が、息苦しさ・よどみを感じる割合は高く、20代では77%が感じると答えている。
室内の空気質が、暮らしや仕事に心理的に大きな影響を与えており、総じて清潔や快適、健康に対する関心も高まり、こうしたニーズに応える機器への注目も集まることになる。
ルームエアコンはIAQ機器へと進化
室内の空気質を高めるための機器は幅広く、主要な商品ではルームエアコンや空気清浄機、換気扇などが挙げられる。
また、室内の快適な湿度を保つ加湿器も注目を集めている。特に適度な湿度を維持することによるウイルス対策への効果はよく知られており、昨年度は空気清浄機やルームエアコン同様、前年を大きく上回る出荷台数を記録した。
主力商品であるルームエアコンについては、昨年度は過去最高の出荷台数となる初の1000万台超えを記録している。
買い替え時期の到来、部屋別普及の進展による増設需要の拡大、さらには暖房性能の向上に伴う寒冷地域への普及が、このところ出荷台数全体を底上げさせてきたが、そこにコロナ禍が襲い掛かることで、ニーズが一気に顕在化し、初の大台突破に至ったと見られている。
21年度については、依然として高い空気質へのニーズを背景に前年割れながらも930万~940万台と高水準な需要が見込まれており、エアコン提案には追い風が吹く。
メーカー各社では高い需要がある一方、ユーザーの空気質に対する高い関心を背景に、市場ニーズに応える形での清潔性、快適性を高める機能開発に力が入った。
とりわけ大きな動きとなったのは換気機能の搭載、空気清浄性能の向上だろう。IoT機能を搭載することで、最適な運転制御を図り、清潔・快適提案と同時に省エネ性にも配慮した機能開発が進んでいる。
換気機能搭載については、ダイキン工業が先行して対応していたが、パナソニックも主力の「エオリア」LXシリーズに新「ナノイーX」搭載に加え、給気換気機能を搭載、新鮮な外気を取り込みながら室内の快適性を高め、空質性能がさらに向上した。
同社のLXシリーズは、室外機に業界初となる「高分子収着材」を搭載し、換気はもとより、給水レスによる加湿と新除湿方式により、年中快適な湿度コントロールと温度コントロールを実現、差別化提案を図っている。
三菱電機は、住宅用熱交換型換気扇「ロスナイ」とIoTで連携するルームエアコン「霧ヶ峰」FZ/Zシリーズを今月から投入した。
住宅用熱交換型換気扇が家庭用エアコンと連携して動作するのは業界初。搭載する赤外線センサー「ムーブアイmirA.I.+」が3人以上の在室を検知すると、ロスナイが自動で強運転に切り替わり、換気風量を増やし二酸化炭素(CO₂)濃度を減らす。
こうした新たな動きで、今まで以上にルームエアコンは、室内空気質を向上させる機器として注目を集めそうだ。
IAQに絡む機器への関心が高まる
ニューノーマルな生活が定着する中、清潔・健康意識の高まりを背景に、空気清浄機も昨年度は好調に推移した。
20年度出荷台数は過去最高となる約360万台(前年比177%)と大幅な伸びを記録した(日本電機工業会=JEMA調べ)。今期は反動により前年割れとなる見込みだが、空気質への関心が継続していることから、今後も安定した需要が見込めそうだ。
イオン機能の搭載をはじめ、高性能フィルターの進化、深紫外線LED搭載など、各社さまざまな視点でウイルス抑制機能を開発、清潔ニーズに対応している。
加湿器についても、昨年度は出荷台数ベースで前年比160.3%の121万台と大きく伸長、金額ベースでは同134.1%となった。
加湿は特に冬場の乾燥対策、ウイルス抑制対策に効果的で、このことは広く知られていることから、高いニーズがある。
近年、空気清浄機やルームエアコンへの加湿機能搭載も増えているが、依然として加湿器単体のニーズは強く、今期(上期)に入ってからも前年同期比126.5%と2桁伸長が続く。
換気扇も今期は堅調に推移しており、上期は同103.2%となっている。換気扇については、新設住宅着工件数と連動するものの、リフォーム需要での導入など堅調な動きがある。
また宿泊施設や飲食店、商業施設などへの後付け設置の需要もあり、後付け可能な常時換気・熱交換気扇など、ニーズに即した商品開発も活発だ。
空気質に対するニーズは根強くあり、IAQ機器への関心はこれからも続くと見られ、最適な商材の提案がより重要となる。