2022.01.18 アンモニア混焼50%超へJERAなど、既存の石炭火力設備で実証
アンモニアの混焼実証が進められている碧南火力発電所(提供=JERA)
東京電力グループと中部電力が出資する発電会社JERA(東京都中央区)などが、アンモニアを混ぜて燃焼させることで、石炭火力発電から排出される二酸化炭素(CO2)を削減する技術開発を加速させている。7日に同社の碧南火力発電所(愛知県碧南市)で、石炭に混焼させる比率を50%以上にすることを目指す実証に取り組むと発表した。既に今年度から20%の混焼技術を確立する実証を始めており、目標を引き上げた形だ。大型商用レベルの発電所でのこうした実証は世界に先駆けた取り組みという。
新たなエネルギーとして有望視されるアンモニアは、燃焼時にCO2を排出しないため、石炭に混ぜる分だけCO2の排出量を削減できる。発電自体にも影響を及ぼさないという。
同発電所の4号機では、大半の既存設備を活用しながら、粉状にした石炭に気体のアンモニアを20%混ぜて燃焼させる技術開発を進めている。総合重工業メーカーIHIと共同で行い、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から助成を受ける。
要のバーナー開発
重要になるのが、燃料を燃やすバーナーの開発だ。ボイラーに取り付けるバーナーや付帯設備を変える最低限のコストだけで、アンモニア混焼できる設備への転用を目指す。「足元からCO2を減らしていくことが目的。電力の安定供給を維持しながら、最も低コストでスピーディーにCO2を減らすことができる」(JERA)。
20%混焼の技術については「まだ検証を続けている」(同)途中だが、今回、20%混焼と同じ企業連携で、さらに混焼率を50%以上に引き上げていく実証の開始が決まった。2028年度までの約8年間、続ける。
これまでの技術を生かしつつも、「アンモニアの混焼率が高まれば、バーナーも新規に開発が必要」(同)という。一方、アンモニアだけの専焼となれば、リプレース(設備を新しく交換)が必要とされる。
JERAなどは24年度までに20%混焼の技術を確立した上で、新たなバーナーの開発に着手し、24年度までにボイラーなどの設備の設計も検討する。同発電所の4号機か5号機に取り付けて実証を進める考えだ。建設中を含め国内に5カ所持つ石炭火力発電所で30年代にはアンモニア混焼を平均20%にすることを目標にしているという。
同社は、国内にLNG(液化天然ガス)や石油などの火力発電所が27カ所あり、設備容量7000万kWに及ぶ最大の発電会社。政府がカーボンニュートラル宣言をする前の20年10月に「JERAゼロエミッション2050」を公表し、50年時点で国内外の事業から排出されるCO2を実質ゼロにする方針を示した。
同社は「変動性のある再生可能エネルギーを導入するために、自然条件に左右されない火力発電で補完する必要がある」と指摘。「再エネを火力発電で支えていくためにゼロエミッション火力を追求しており、重要な技術の一つがアンモニア混焼だ」と説明する。