2022.01.28 【新春インタビュー】アイ・エス・ビー 若尾一史社長

4事業分野でシナジー高める

 -長引くコロナ禍で、経済環境も大きく変わりました。世の中のデジタル化も加速しています。2021年のICT市場の振り返りや22年の見通しはいかがですか。

 若尾 21年のICT市場は、働き方改革、デジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)が加速、堅調に推移したと思います。一方で半導体など部材の不足が当社の事業にも少なからず影響を与えています。部材不足はしばらく続くとみています。

 昨年からメタバース(仮想空間)が注目されています。今後、ICT市場にも大きな影響を及ぼすのではないか、と思っています。

 22年のICT市場も、IoT、AI(人工知能)、5G(第5世代移動通信規格)などがけん引して、活発化してくる。サービスとしてどう提供していくかでしょう。

 -21年度(12月期)の業績は、増収増益で推移してきました。業績面から見た振り返りはいかがですか。

プライム業務を強化

 若尾 21年度業績は、新中期経営計画初年度のもとで、おおむね順調に推移してきました。第3四半期(1~9月)までの業績は、人手不足に対応した業務効率化、5G関連業務などの受注増、既存セキュリティーシステムのリニューアル案件の受注増などが寄与しました。5G向け基地局に関わるシステム開発、車載を主とするシステムの組み込み開発、サーバー、ネットワークの構築業務なども堅調でした。

 一方で課題も見えてきました。当社は、請負業務が多かったのですが、ソリューション事業を拡大するため、プライム業務の強化を目指しています。当然、新規投資なども積極的に行っていますが、一部プライム案件で、プロセス管理などの問題が発生しました。ただし、ほかのICT事業が好調で、そのマイナスを吸収しています。プライム業務の強化は、当社の成長に欠かせませんので、今後も、積極的にチャレンジしていきます。より一層の事業の明確化、見える化を図るなど課題を乗り越えることで、当社はさらに強くなっていきます。

 -昨年、市場環境の変化に適応した経営戦略を推進するため事業体制を変更されましたが、効果は出てきていますか。

 若尾 これまで8項目の事業分野で構成された情報サービス事業セグメントを、「モビリティソリューション」「ビジネスインダストリーソリューション」「エンタープライズソリューション」「プロダクトソリューション」の4事業分野に集約しました。以前から検討していましたが、今の時代に合った構成にし、シナジー効果を高めることを目指しています。

 モビリティソリューションは、車載という狭い範囲の捉え方ではなく、アプリケーションなど車載以外も含めモビリティサービスとして取り組んでいます。5Gの本格展開に伴い、基地局の拡充、その先の6Gも見据えて取り組んでいきます。

 ビジネスインダストリーソリューションは、医療、IoT分野へのクラウドを含めたシステム開発の提案、エンタープライズソリューションは、プライム案件の受注拡大を目指しています。また、プロダクトソリューションは、セキュリティー関連やL-Share事業などの販売拡大を図っていきます。

地域ビジネスの活性化に貢献

 -21年度から新たな中期経営計画に取り組んでいます。改めて目指すところをお聞かせください。

 若尾 21年度(12月期)からISBグループ中期経営計画2023「新しい一歩~move up further~」をスタートしました。この新中計を2030年の創業60年に向けての通過点と位置付けています。新中計は、新たな領域への挑戦で、新生ISBグループ創出を目指しています。数値目標としては、23年度に売上高300億円、営業利益24億円、営業利益率8%を計画しています。

 この目標を達成するため重点的にソリューション事業の拡大、グループ経営の強化、地域拠点でのビジネス推進を進めていきます。

 ソリューション事業の拡大では、プライム業務の強化を図っていきます。本格的にプライムコントラクターを目指します。技術力、コンサルティング力、さらにより徹底したリスク管理などハードルは高くなりますが、社員の意識改革、モチベーション向上にもなると思います。この業務を拡充し、将来はプライム事業として、一つの柱にしていきたい。

 ISBグループは、国内8社と海外のISBベトナムを合わせて9社で業績を支えてきました。グループ会社の事業内容は、ソフトウエア開発、システム開発、組み込み開発、インフラ系、プロダクト系などさまざまですが、それぞれが特徴を出しながら連携し、シナジー効果を発揮して、グループとして成長を目指します。グループ内でフィールドサポートに特化したエス・エム・シーという会社がありますが、ISBのインフラ業務を一部移管しました。

 昨年は、アルテリア・ネッワークス社が代理店として営業、販売を行っているデバイスのセキュリティー管理を行うモバイルデバイスマネジメント(MDM)事業をISBが行うことになりました。今後、同事業の拡大とともに、サイネージやグループ会社アート社が提供する入退室管理システム「ALLIGATE(アリゲイト)」との連携も行い、付加価値を加えて提案していきます。

 今、政府は「デジタル田園都市国家構想」など地方創生に力を入れています。当社も日本各地に拠点を有していることを強みに、地場の企業と連携して地域ビジネスの活性化に貢献していきます。

 -早くからベトナム(ホーチミン市)にISBベトナムを設立するなど、海外展開を進めてきました。

 若尾 ISBベトナムは、オフショア開発を中心としたラボ的な存在として、当社のグループ経営に貢献しています。ハードロックダウンもありましたが、テレワークやパートナー企業との連携により、業績に大きな影響はありませんでした。ISBベトナム側からもISBへ積極的な提案を行い、ウインウイン(win-win)の関係を築いていきたい。ASEAN地域でも同様な展開をしていくため調査を進めています。将来的には、北米、欧州、アジア地域での海外展開を検討しています。そのためにも、ISBならではの武器を持って、お客さまのニーズを引き出し、提案していくことが必要です。海外で求められる技術力、提案力を磨いていきたい。海外展開では、M&Aやアライアンスも検討していく必要があると思っています。

創業60周年に向け企業価値高める

 -昨年11月にはサステナビリティ委員会を設置されました。SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みをお聞かせください。

 若尾 グループ会社社員全員へSDGsのアンケートを行いました。SDGsは、経営層・幹部だけが意識しても意味がない。ISBグループ全社員で取り組んでいく必要があります。「SDGsを知っていますか」「何の略ですか」「いつから始まりましたか」などごく簡単なものです。まず、SDGsを意識するところから始めました。今の仕事は「SDGsに関係がない」という回答もありましたが、「SDGsに関係している」という回答も多かったですね。グループ会社から推進活動メンバーを任命し、グループを挙げて取り組んでいます。

 社会・環境問題をはじめとするサステナビリティーを巡る課題を理解し、事業活動を通じて課題を解決するための取り組みとしてサステナビリティ委員会も設置しました。

 ICTによるソリューション事業を創出することによって、SDGsに貢献できると考えています。理論先行型にならず、経営にプラスする形でSDGsに取り組んでいきます。

 -20年に創業50周年を迎え、若尾社長は就任以来、グループ内にプロジェクトチームを創られ、ISBのあるべき姿などグループ理念体系づくりにも取り組まれてきました。経営の方向性など聞かせてください。

 若尾 まず、新中計で掲げた目標を達成したい。新中計は、創業60年に向けての通過点と考えています。昨年は、営業体制を強化し、成果が表れてきました。22年は、会社の経営の質を高めていけるよう、さらに体質強化を進めていきます。また、プライムコントラクターとしての事業を、ぜひ確立したい。海外展開も積極的に考えていきます。

 ブランディングも強化していきます。もっとブランドイメージも向上させるため、ホームページの刷新なども行っていきます。これから今後、10年通用する武器を持ち、ソリューション事業の強化・拡大、さらにその先の創業100年まで見据え、企業価値を高めていきたい。

 創業者の故若尾守保が提唱した「夢を持って夢に挑戦」がISBグループの企業理念で、企業文化です。新たに創ったミッション・ビジョンでは、時代の変化に適応し、知恵とITの融合により、未来を切り開く新たな価値の創造を目指しています。グループの社員一人一人が働きやすい会社に向け取り組んでいます。

(聞き手=電波新聞社代表取締役社長 平山勉)