2022.06.03 【5Gがくる】ローカル5G簡単解説<89>5GはVUCA時代を乗り切るビジネス基盤①

軍で使われた造語

 「VUCA(ブーカ)」という言葉を最近聞くことが増えてきた。VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を並べた造語だ。

 冷戦終了後のテロとの戦いなど、予測不可能な国際情勢を示す用語として1990年代後半あたりから米軍で使われはじめたのだが、その後、2010年代になってからはビジネス用語としても使われるようになった。

 まず「V(変動性)」とは、ビジネス環境の変化の質や量、スピードが予測不能であることを指す。イノベーションはその最たるものだ。例えば、デジタル技術の核となる半導体の性能向上は「ムーアの法則」に従うとされている。

5Gは、ビジネス基盤となれるか?

 ムーアの法則は「半導体の性能が18カ月で2倍になる」というもので、この性能向上によってスマートフォンやクラウドコンピューティング、超高速5G通信などのICTが加速度的に進化した。

 それに呼応したかのように動画の配信やSNSによる発信など、ユーザー視点のデザイン思考によって多様なサービスを適時提供できるプラットフォームビジネスモデルも登場してきた。

 今や膨大なビッグデータ資源を活用して新たな価値を提供できる深層学習(ディープラーニング)をはじめとした人工知能(AI)の驚異的な進化も相まって、画像認識や自然言語処理など、今までできなかったデータドリブン型ビジネスモデルも驚く速さで伸長している。

 次に「U(不確実性)」の要因には、少子高齢化や地球温暖化といったビジネスを取り巻く環境の大きな流れがある。最近は、活発化する地震活動や異常気象による大規模な自然災害も多い。

 コロナ禍やウクライナ情勢など急激な社会情勢の変化、大規模化するサイバー攻撃などによるサプライチェーンの寸断、電力や通信インフラの寸断などの突発的変化もある。昨今、これらの変化は不確実性を増し、ますます予測が難しくなっていると言えるだろう。

あらゆる業種の企業が協業する

 「C(複雑性)」については、どうだろうか。私たちを取り巻く環境がグローバル化する中では、たとえ一つの国で起きた出来事であっても、政治や法律、文化などのさまざまな要因が複雑に絡み合った結果、ビジネスに大きな影響を与える恐れがある。

 加えて、デジタルトランスフォーメーション(DX)によるビジネス変革のうねりが高まる昨今は、組織という既存の枠組みを越えた共同事業体が生まれてきている。ローカル5G通信事業者をはじめIoTやAIによるデータ活用を模索するあらゆる業種の企業が協業するケースも増えている。企業のルールや文化の違いによるデジタルリテラシー上の問題も出てきているとも聞く。

 最後の「A(曖昧性)」は、これらの問題が予測不能であり解決策が見つからない曖昧な状況のことを指す。果たして5Gは、VUCA時代を乗り切るビジネス基盤となれるのだろうか?(つづく)

 〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問。グローバルベンチャー協会理事。国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉