2022.06.15 「培養皮膚」で指型ロボット培養肉にも取り組む東大教授ら成功
開発された指型ロボット(提供=東大)
東京大学は、「生きた」皮膚を持つ指型のロボットを、世界で初めて開発したと発表した。人の皮膚細胞から作製される「培養皮膚」を利用するもの。アシモなどのように、人に似た「ヒューマノイドロボット」(人型ロボット)の被覆材料としてだけではなく、義手や義足、皮膚を対象とする医薬品や化粧品、再生医療などでの活用が期待される。人に近いロボットに迫れるか―。
東大大学院の竹内昌治教授らのグループが取り組んできたもの。培養肉などでも知られる竹内教授は、筋肉や皮膚、感覚組織など生体組織を取り込んで作られるバイオハイブリッドロボットにも取り組んでいる。
研究の背景には、人間らしいロボットの社会進出への要請がある。人とコミュニケーションをしたり、介護や家事などで人に交じって作業したりするロボットが、今後増えていくとみられる。人間と円滑なコミュニケーションを進めるうえでは、人間にケガをさせたり、ロボット自身が接触で損傷や不具合を起こしたりしないよう、皮膚のような柔らかい外装を持つことが求められている。それは、柔らかく人間らしい見た目を持つことにもつながる。
こうしたロボットは通常、シリコンゴムで被覆されることで、人間に近い柔らかい「皮膚」を備えてきた。しかし、シリコンゴムには自己修復やセンシングといった能力がないことが課題となっていた。
今回、さまざまな工夫の結果、培養皮膚で被覆することに成功した。研究には早速、内外から反響も寄せられている。教授らは今後、さらなる大型化やセンシング機能の取り込みなどを進めたい考え。
いわゆる神経系や感覚器に相当する機能を持たせていけば、触覚や嗅覚のある皮膚、そして、それを備えたロボットといったものも考えられそうだ。
(16日の電波新聞・電波新聞デジタルで詳報予定です)