2022.07.01 【家電総合特集】IoT家電クラウド連携など進む、柔軟な商品・サービス提供へ

クラウドと連携してさまざまなサービスの提供を受けられるIoT家電

IoT家電同士の機器連携で、稼働状況の確認など、より使い勝手が高まるIoT家電IoT家電同士の機器連携で、稼働状況の確認など、より使い勝手が高まるIoT家電

 家電製品は、IoT化の流れが加速している。クラウドと連携してさまざまなサービスを享受できたり、購入した後からでも機能が追加されるなど、よりユーザーに寄り添い最適に進化するIoT家電は、今後白物家電のスタンダードになる。

 コロナ禍で新しい生活様式が浸透し、テレワークやオンライン学習など、ネット環境を使った暮らしに慣れたユーザーが、今後IoT家電を当たり前のように受け入れる時代もそう遠くなさそうだ。

 IoT家電は、インターネットとつながり、各種サービスの提供や自動調理メニューなど新機能をダウンロードし、家電をアップデートできるなど、今までのような家電製品の使い方とは異なり、より顧客に使い勝手を高めた価値提供を図ることができる。

 従来の家電製品は、ハード単体における多機能化によって価値提供を図っていた。購入した時点のスペックがその後も変化することはなく、毎年顧客価値を高めるため多機能・高機能化した新商品を投入していた。このため、顧客にとっては不要な機能まで提供することにつながっていた。

 IoT家電の登場で、こうした家電製品開発の方向性も変化していく可能性がある。例えば、当初からフルスペックで提供しなくとも適切な価格で、シンプルな機能のものを最初に提供し、後から欲しい機能を追加するという提供の仕方もあり得る。

 顧客にとって本質的な価値が何かを起点にし、IoT対応をベースに、柔軟な商品・サービス提供が今後さらに強まると見られる。

 ■各社IoT家電のラインアップ拡充

 IoT家電(AIoT家電)で先行したのはシャープで、2016年に第1弾となるテレビ外付けのセットトップボックス「COCORO VISION Player」を発売し、初年度6カテゴリ26機種からスタート。現在12カテゴリ710機種までラインアップが拡大している。

 同社の白物家電におけるAIoT対応機種の割合は50%を超えるようになり、24年度には、同社の白物家電販売金額構成比で、国内は7割以上、欧米・中国・台湾では5割以上と、グローバルでネットにつながる家電の普及を拡大していく。24年度には国内のAIoT家電のネット接続率は8割以上を目指すなど、同社の家電製品はAIoT家電がスタンダード化する。

 パナソニックも、IoT家電の展開を加速しており、現状国内の家電販売額の30%がIoT家電となり、24年度には60%まで高めていく考えだ。

 同社では、IoT家電の特長的な製品戦略の一つとして、いくつもの機能をふんだんに盛り込む〝フルスペック〟ではなく、一人一人にちょうどいい価値を提供する「マイスペック」シリーズを提案している。

 購入当初は必要な機能に絞り込み、メニューや部材などは購入した後からダウンロードあるいは追加購入して、自分仕様にアップデートできるシリーズとして注目されている。

 また、昨年10月からIoT対応家電の動作状況や暮らしに役立つ情報を、スピーカー搭載の家電が音声で知らせてくれる「音声プッシュ通知」サービスも展開している。

 今春からはヤマト運輸の無料個人向けサービス・クロネコメンバーズと連携し、宅急便のお届け通知も開始した。今後も家事や暮らしをより便利に、快適にするサービスを拡充し、暮らしの価値を高めていく。

 日立グローバルライフソリューションズでは「グリーン×デジタル」を重視した家電戦略を加速し、今年度はコネクテッド家電の拡大を加速し、顧客に対する新たな価値の提供を続けるとともに、コネクテッド家電の接続率向上に力を入れる。

 三菱電機は、IoT基盤「リノバ」を生かしたIoT対応を進めている。冷蔵庫の開け閉め回数を確認できたり、炊飯器でお米の在庫管理をできるようにしたりと、新しい使い方を提案。

 IoT化によって、機器同士の連携はもとより、機能の進化、生活の変化でどういった機能を便利に使えるかなど種々の暮らしに役立つ情報提供など、IoTを生かした家電製品の進化を加速する。

 東芝ライフスタイルでもIoT化の流れを加速する一方、今後IoT家電で蓄積したログデータを活用した製品開発や新たなサービス創出にも力を入れていく。

 ■IoTで使い勝手がより向上

 IoT家電の特長は、機能のアップデートにとどまらす、クラウド上のアプリから各種のサービスと連動できる点だ。

 IoT調理家電では、最適な食材を宅配するサービスの利用や自動調理メニューのダウンロードなど、便利な使い方ができる。IoT洗濯機の場合、液体洗剤や柔軟剤の自動購入機能もある。

 IoTルームエアコンや空気清浄機では、センサー情報とクラウド上の人工知能(AI)により、その部屋に最適な空調制御を図る、といった省エネ性と快適性の両立で、暮らしの質を高めることができる。

 さらにIoT冷蔵庫では、庫内の在庫管理を図ることで、無駄な買い物を防ぎ、食品ロスを抑制するといった使い方ができる機種もある。また日常よく使う冷蔵庫の開け閉めを検知して、遠隔からの見守りに活用するサービスもある。

 IoT機能の進化で、今後は故障検知・予知などアフターメンテナンスへの活用も増えそうだ。