2022.09.06 風力を船舶の推進力に 商船三井など共同研究 航空宇宙工学も動員、温室ガス削減

ISHIN船型を採用するLNG燃料フェリーのイメージ

 海運大手の商船三井が、海上で風力を船舶の推進力に生かす技術開発を推し進めている。船の形状などを工夫することで燃費の向上につながり、航行の際に排出する温室効果ガスを削減できる。業界を挙げて取り組んでいるゼロエミッション燃料としてのアンモニアや水素が普及しても、燃料自体の消費量を減らす技術で、効果を継続できる。ソーラー無人飛行機の開発なども手掛ける航空宇宙工学の専門家らを交えて共同研究に乗り出した。

 同社のほか、グループの専門商社、三井造船昭島研究所(東京都昭島市)、東海大学の4者は、航空宇宙工学を取り入れた風利用の推進について共同研究することで合意した。

 東海大工学部の福田紘大准教授の研究技術を導入していく。福田准教授らは、これまでにロケットや航空機などに技術を適用し、ソーラー無人飛行機の開発などを手掛けてきた。こうした知見を今回の共同研究で船舶分野にも拡大する。日本から太平洋を通り米国への往復路の運航で、約12%以上の温室効果ガスの削減を目標にする。

 既に商船三井などは、燃費を抑えて温室効果ガス排出を削減するため、風を船舶の推進力に変えられる「ISHIN船型」を開発。船首などからの風圧を低減させ、風の流れをスムーズにして推進力に利用できる船舶の形状で、実際の最新鋭のLNG(液化天然ガス)燃料フェリーへの採用を決めている。この技術で燃料の重油を減らすことにより、北米航路で温室効果ガスを約5%削減可能。さらに、福田准教授らの知見を組み合わせ、削減率を押し上げることを目指す。

 共同研究では2022年度内に設計の概要をまとめる計画だ。「海上で風は無尽蔵。風の力をいかに最大限活用していけるかがテーマだ」(同社)。

 海上での風力の活用において同社は、船上に立てた巨大な帆が受ける力を推進力に変える「ウインドチャレンジャープロジェクト」も推進している。帆は繊維強化プラスチック製で伸縮し、最大で縦約54メートル、横約15メートルに広がる。石炭などを搭載できるばら積み船などへの導入を計画する。