2022.09.26 【九州・山口産業特集】半導体関連産業が活況、西九州新幹線開業で期待

熊本県庁での富士フイルムの立地協定調印式(富士フイルム提供)

新幹線開業でJR長崎駅周辺の開発が進む新幹線開業でJR長崎駅周辺の開発が進む

 昨年11月に台湾TSMCが熊本県菊陽町へ進出を発表後、九州地方では半導体関連産業が盛り上がりを見せている。パワー半導体が集積する福岡県など各県で「シリコンアイランド九州」復活に向け、産学官による動きが活発だ。カーボンニュートラルを追い風に、創エネ・蓄エネなどエネルギー関連産業も勢いづいている。23日には武雄温泉駅(佐賀県武雄市)と長崎駅(長崎市)の間に西九州新幹線が開業。佐賀・長崎両県の経済活性化への期待も高まっている。

 九州では半導体関連の立地案件が増加、熊本県は今年4月の組織変更で企業立地課に半導体立地支援室を設けて対応している。半導体製造のための特殊ガスなどの供給と関連するインフラを手掛けるジャパンマテリアル(三重県菰野町)は、3月に熊本県大津町に土地と建物を取得、同じく大津町で半導体製造装置部品などを手掛けるフェローテックマテリアルテクノロジーズ(東京都中央区)が5月に立地協定を締結している。

 富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(横浜市港北区)は、半導体製造プロセスの基幹材料CMPスラリーの国内初拠点を熊本県菊陽町に新設。富士フイルムの後藤禎一社長も出席して9月12日、立地協定調印式を行った。2023年春に着工、24年1月稼働予定だ。

 以前から事業所を持つ企業でも新棟建設は増えている。東京エレクトロン九州合志事業所(熊本県合志市)は、延べ床面積は約2万4200平方メートルの半導体製造装置の開発棟を23年春に着工、24年秋完工予定。クラボウ化成品事業部は、生産能力倍増へ、熊本事業所(同菊池市)の隣接地を8月に取得した。着工は23年3月ごろ、操業は24年4月ごろを予定。

 熊本以外でも半導体関連の動きは目立っており、ソニーセミコンダクタソリューションズは21年度からの3カ年計画で約9000億円をイメージセンサーの設備へ投資予定。ソニーセミコンダクタマニュファクチャリングの長崎テクノロジーセンター(長崎県諫早市)では、昨年4月から稼働した「Fab5」の増設部分を今夏稼働。5月からはさらに拡張工事に入っている。

 京セラは鹿児島川内工場(同薩摩川内市)に同社最大規模の6万5530平方メートルの延べ床面積でSMDセラミックパッケージを生産する新棟を5月に着工、23年10月操業予定。同工場の有機パッケージ生産能力を24年度に現在の約4.5倍に引き上げる。鹿児島国分工場(同霧島市)では、積層セラミックコンデンサー(MLCC)の新棟を23年2月に着工する。延べ床面積3万7600平方メートルで24年5月に操業開始予定。

 その中で環境に配慮した取り組みも進められており、ローム・アポロが12月から本格稼働する、炭化ケイ素(SiC)パワーデバイスを製造する筑後工場(福岡県筑後市)の新棟は、100%再生可能エネルギーを使用、LED照明などで省エネにも取り組んでいる。

 三菱電機パワーデバイス製作所(福岡市西区)は、敷地内に分散していた実験室、試作ラインなどを1カ所に集約した「パワーデバイスディベロップメントセンター」(PD棟)を9月から稼働。低炭素社会の実現に向けたパワー半導体の需要拡大に備え、開発を加速させるとともに、環境・省エネ対策として空調や換気設備などの高効率機器、人感・照度センサー付きLED照明も導入している。

 こうした旺盛な工場建設に合わせ、人材の育成・確保にも力が入る。九州経済産業局は今年、産学官などで構成する「九州半導体人材育成等コンソーシアム」を設立。「人材育成ワーキンググループ(WG)」と「サプライチェーン強靭化(きょうじんか)WG」の二つを設け、事務局は九州半導体・エレクトロニクスイノベーション協議会(SIIQ)が務める。人材育成WGでは、企業などが半導体産業について講義する出前授業などを想定している。