2022.09.28 【関西エレクトロニクス産業特集】ローカル5G 総務省の開発実証の選定増加 近畿総通局管内で活用事例も拡大

 第5世代移動通信規格5Gが通信事業者のみによる利用から範囲を拡げている。

 地域の企業や地方公共団体なども自らの建造物や敷地内に構築した無線システムが「ローカル5G」(L5G)と呼ばれ、地域の課題解決と地域格差解消のための手段として重要なインフラになると期待されている。

 現在は、L5Gの利用拡大に向けて技術検証や地域課題を解決する現実の利活用場面を想定した開発実証の段階にあり、このための予算として総務省は2022年度に40億円の当初予算を計上している。

 総務省は毎年、さまざまな利用環境においてL5Gなどを活用したソリューションを創出する「課題解決型ローカル5Gなどの実現に向けた開発実証」の提案を公募しているが、22年度の提案公募の結果を8月5日に公表した。

 22年度は51件の応募があり、うち選定されたのは20件。近畿総合通信局管内に本社を置く企業の提案は、NTT西日本とシャープの各2件、NTTデータ関西1件の計5件。

 総務省は22年度のL5Gに関する開発実証関連として、線路や道路といった線状の空間など「特殊な環境における実証事業」と、具体的な利用場面を想定した上で使用される端末の試作を行う「端末システム試作事業」の計二つを新事業区分として公募した。

 特殊な環境実証事業として選定された四つの案件のうち、近畿圏企業ではアイテック阪急阪神が選定。

 端末システム試作事業では3件の選定のうち、関西系ではシャープの過酷な現場での利活用を想定したUSBドングルと、パナソニック コネクトのエンコーダー一体型ルーター端末の試作の2件が選ばれた。

 近畿総通局は、20年に「近畿ローカル5G推進フォーラム」を設置して啓蒙(けいもう)と普及に努め、6月末までに計7回の会合を開いた。

 こうした着実な活動が実を結び、近畿ではローカル5G用無線局(実用局)の活用事例が増え、20年10月の第1号から今年8月末までに19件(免許非公表希望企業除く)に無線局の免許を付与した。

 一方で、企業は政治・経済環境に敏感。近畿総通局の無線担当者は「ウクライナへのロシア侵攻や経済環境などが影響して、免許付与のペースは昨年より鈍い」と語っている。