2022.10.12 【テレビ特集】メーカー各社が画質と音質に磨きをかける
主要テレビメーカー各社は、高精細4Kテレビの買い替え促進に向けた提案を強化していく。各社の2022年モデルは有機ELテレビ、液晶テレビともに画質音質に磨きがかかり、有機ELテレビは42V型を新たに加えるなど、選択肢の幅がさらに広がってきている。リビングなどの薄型テレビを購入してから10年が経過している家庭も増え、買い替え時期にも入っているため、各社は画質と音質をはじめ、視聴シーンなどに応じた製品提案を進めることで需要を喚起していく構えだ。
国内のテレビ市場は、20年から21年にかけコロナ禍の〝巣ごもり〟需要に後押しされ、4Kテレビを中心に買い替えが進んでいたが、ここにきて一服感が出ていた。店頭では買い替えを促す画質比較の提案などに取り組むほか、4Kテレビの製品群を増やすことで、多様化するテレビへの需要に応えようとしている。
電子情報技術産業協会の22年8月の薄型テレビの国内出荷(台数)をみると、前年同期比同1.4%減の35万4000台だったが、4Kテレビは同6.8%増の21万4000台と14カ月ぶりのプラスになった。有機ELテレビも同72.7%増と2カ月連続のプラスで復調の兆しがみえる。
テレビ全体の出荷金額は同17.3%増の385億円となり、うち4Kテレビの出荷金額は全体の87.1%を占めた。特にテレビの出荷単価は確実に上昇しており、付加価値製品の販売につながっているとみられる。
各社の22年モデルは画質と音質に磨きをかけている。有機ELテレビは、各社ともパネルの開発から独自に進めるとともに、長年培ってきている映像処理技術と組み合わせて差別化を図ろうとしている。画づくりのキーワードは、より自然に近い映像表現だ。
各社の動きを見るとパナソニックは、独自設計で組み立ても自社で行う高輝度有機ELパネルと新開発のパネル制御を組み合わせて明るく鮮やかな色再現を前面に出す。さらにテレビの新たな視聴環境を提案する壁掛けの新製品も発表した。テレビをインテリアとして設置できるようにすることで需要を掘り起こしていく計画だ。
ソニーは、人間の脳のように処理をする認知特性プロセッサーと、新開発の有機ELパネルを採用することで、自然な映像再現に磨きをかけている。42V型有機ELも投入し、幅広い層への提案を加速している。
シャープは、4K有機ELと4K液晶の全機種に新開発の人工知能(AI)プロセッサーを採用した画像処理エンジンを搭載した。有機ELは42Vも用意し、ゲームなどを楽しむユーザーに向けた提案も始めた。
TVS REGZAは、開発に3年を要した新高画質映像処理エンジンを搭載した4K有機ELと、4K液晶を展開している。液晶はレグザ初となるミニLED広色域量子ドットパネルを採用し、画質に磨きをかけた。
LGエレクトロニクス・ジャパンは、4K有機ELの幅広い製品群を前面に出す。42V型から83V型までそろえ、新パネルとAI対応の最新映像処理エンジンを搭載した最上位機はLG史上最高画質を実現した。
パナソニックの主力製品
パナソニックは、新しい住空間を実現するテレビを「くらしスタイルシリーズ」として本格的に提案を始めた。新シリーズは、映像の無線伝送技術を採用し、ディスプレーとチューナーを別体にしたテレビで、アンテナ端子の場所を気にせずに住空間や視聴環境に合わせて自由に楽しめる。
2012年に風呂などでもテレビ視聴ができる「プライベートビエラ」を発売し、昨年は4K放送の無線伝送を採用しキャスター付きスタンドで自由に設置場所を変えられる「レイアウトフリーテレビ」を発売してきた。
4K有機EL「LW1シリーズ」
好きな場所に壁掛け設置
今回、石こうボードを使った壁であれば、簡単に壁掛け設置できる高精細4K有機ELテレビ「ウォールフィットテレビ LW1シリーズ」を発表。11月18日から発売する。
新製品は、壁から画面までが約3.5センチメートルの薄型ディスプレーを採用した壁掛けテレビ。4K映像を無線伝送できる独自技術により、モニターとチューナーを別体にしたことで、アンテナ端子の場所に縛られずに好きな場所にテレビを掛けられる。
ディスプレーは、高いコントラストと精細感のある4K有機ELを採用し、独自のパネル制御と人工知能(AI)を使った画質調整により、コンテンツに合わせて高画質な映像が楽しめる。
壁と一体感のある設置をしても音質を損なわないようスピーカーも見直した。今回、同社で初めて画面を振動させて音を出す画面振動スピーカーを採用し、スピーカーボックスなどを付けずに音を出せるようにした。独自の音声処理技術でボックス型スピーカーと遜色ない音質を実現している。
これによりモニター部は全面が薄型にでき、壁と一体になって取り付けられる。別体となるチューナーは、BS4K・110度CS4Kのダブルチューナーを搭載。上位のLW1は、2テラバイトのハードディスクも内蔵し、2番組同時裏番組録画もできる。リモコンはブルートゥース方式を採用しているため、モニターやチューナーにリモコンを向けずに操作できるようになっている。
取り付けも簡単だ。本体は従来の55V型テレビより重量を4割削減した上、新開発した壁掛け用の専用金具により、一般的な住宅に採用されている石こうボードの壁であれば、特殊工具などを使わずに細いピンだけで簡単に壁掛け設置ができる。モニターからは白い電源コードのみが出ており、設置後の部屋のデザインも損なわない。
価格はオープン。市場想定価格はHDD内蔵モデルが37万円前後(税込み)となる。同社では「一人一人の生活スタイルに寄り添うテレビとして提案したい」としている。