2023.01.03 【暮らし&ホームソリューション特集】’23展望 IoT家電
キッチン家電では比較的IoT化が進む。ユーザーがIoT家電で使ってみたい家電はキッチン家電が1位にあがる(写真はパナソニックのライス&クッカー「キッチンポケット」アプリ連携イメージ)
利便性向上へ進化を続ける
各種サービス連携など
ライフスタイルの変化に合わせ、暮らしの質を高める家電の機能として、ハード自体の進化と並行して、近年はIoT機能搭載の家電製品の投入が広がっている。
特に白物家電における、ルームエアコンや冷蔵庫、洗濯機、オーブンレンジ、炊飯器、空気清浄機といった主要なカテゴリーでは、IoT機能搭載がかなり進んでいる。
IoT家電の投入が始まったのはこの数年のことで、まだまだ進化の途上にあるものの、ユーザーにとっては、IoT化による利便性向上や安心・安全、省エネ、快適な暮らしの実現に、かなりなじみが出てきて、つなげて積極的に活用するユーザーは着実に増えている。
IoT家電に対するユーザーの意識は強まっており、タイガー魔法瓶(大阪府門真市)が2021年に行ったアンケート調査では、実際にIoT家電を使用しているユーザーは8.3%とまだ少ないが、約4割の人が今後IoT家電を使用してみたいと答えている。
家庭でのデジタルトランスフォーメーション(DX)化を進めて家事を便利にしたいかについての設問では、54%がそう思う、もしくはどちらかといえばそう思うと答えている。
また、IoT家電で利用したい家電のトップはキッチン家電(45.1%)、次いでテレビ(40.7%)、掃除家電(39.8%)となり、エアコン、洗濯機、照明もそれぞれ33.6%となった。
IoT家電は、インターネットとつながり、新しい自動調理メニューなど新機能をダウンロードすることで、家電のスペックをアップデートできる。
また、献立提案や天気情報など各種のお役立ち情報の提供や、加湿空気清浄機とエアコンなど家電同士の連携制御、外出先からの遠隔操作、など種々の便利な使い方が可能だ。
加えて、クラウド上のアプリから各種のサービスと連動できる点も大きな特長だ。
IoT調理家電では、それぞれの調理家電の機能に合わせた最適な食材を宅配するサービスの利用が広がっている。
IoT炊飯器では、米の自動購入など便利なサービスも導入されている。同様にIoT洗濯機の場合、液体洗剤や柔軟剤の自動購入機能もある。
ルームエアコンと加湿空気清浄機のIoT連携では、加湿しながら暖房して快適な空間をつくるといった連携空調制御が可能だ。
IoT冷蔵庫では、庫内の在庫管理を図り、無駄な買い物を防ぐ、あるいは食品ロスの抑制を図るといった使い方ができる機種もある。
日常よく使う冷蔵庫の開け閉めを検知して、遠隔からの見守りに活用するなどのサービスもある。例えば三菱電機では、冷蔵庫やエアコンなど同社製IoT家電を使った新たなサブスクリプション(定額課金)サービス「MeAMOR(ミアモール)」の提供を2月から始める。
カメラなどの専用機器や設備が不要で、プライバシーを守りながら生活状況を見守ることができる。一人暮らしの高齢者が増える中、離れた家族の安心・安全につなげようと、社会課題の解決にIoT家電を有効活用するものだ。
省エネ・環境貢献
日本電機工業会(JEMA)では、ホームページ上で一般ユーザーに向けてIoT家電に関する啓発活動に力を入れている。この中で、IoT家電の省エネや食品ロス削減への貢献についても訴求している。
近年、とりわけ電気代が高騰するなか、省エネ家電への関心は高まっているが、IoT家電の場合、スマホなどで稼働状況を確認しやすくなり、各家電の消費電力を見える化できるため、省エネ行動の喚起につなげやすい。
遠隔操作も容易なため、電気の消し忘れを外出先からオフにできるので、無駄な電気代のカットも簡単にできる。IoT家電が基盤となって、さまざまなサービス開発や環境貢献が実現する。
今後、IoT家電がさらに普及するには、顧客にとってより使い勝手がよくなることだろう。IoT家電はユーザーにまずは〝つなげてもらう〟ことが必須だ。
つなげ方をより簡易にするという直接的な改善が求められるほか、つなげて何をするか、ユーザーにとってつなげて意味があるものかということも重要な視点となる。
早くからAIoT家電の提案に取り組み、IoT家電市場をけん引してきたシャープは、現在12品目750機種までラインアップを拡充しているが、「もっと顧客に寄り添い、使っていただけるようにする必要がある。AIoT家電同士の横連携をさらに進め、節電に貢献するとか、長く顧客に使っていただくサービス、ソリューションを提供していきたい。ライフスタイルやニーズの変化にAIoTが応えていく」(菅原靖文執行役員Smart Appliances & Solutions事業本部長)と話す。
IoT機能の進化で、今後は故障検知・予知などアフターメンテナンスへの活用も増えていくだろう。「IoT化によりスペックにもたらす効果や生活への貢献という面は確かにあるが、(今後は)もっとカスタマーケアに使うべきだと考えている」(パナソニックの品田正弘社長)と話す。