2023.01.04 【家電流通総合特集】家電流通の視座 ヤマダホールディングス 山田昇代表取締役会長兼社長CEO

山田 代表取締役会長兼社長CEO

 外的要因に大きく左右されたこの一年、影響は今年も続く。生活シーンや空間演出を重視する風潮はさらに強まり、エネルギー価格の高騰で省エネ・節電意識も高止まりしている。家計への負担を減らしつつも、環境への配慮と合わせ、より良い暮らしの追求を望む消費者が増える中、家電流通に携わる量販店と地域店には、将来を見据えた一段高い視座が求められる。

「暮らしまるごと」提案加速 ライフセレクト進化など店舗開発に本腰

 昨年4月から9月までは業界並みの水準、10月から12月は業界水準を上回る業績で推移した。新型コロナをはじめ、物価高や為替などが大きく影響し、計画に対しては少し厳しい状況だ。ただ、行動制限の緩和で人々が活発に動くようになり、都市部の店舗には来店客が戻ってきている。

 当社は郊外型テックランド、都市型LABI、大型新業態店のライフセレクト、EC(電子商取引)とリアルを融合したweb.com店、リユース品を取り扱うアウトレット店など、お客さまのニーズに合わせて「面」で対応できる店舗展開を進めている。市場や需要の変化に対応し、「暮らしまるごと」提案で事業を成長させる戦略だ。

 私は、日本では少子高齢化の流れを止めることはできず、長期的に家電市場はシュリンクすると以前から指摘してきた。そうした中で、どこの企業が家電市場を取っていくかというと、社会環境に合わせた魅力ある店づくりを行っているところだと思う。

 当社は現在、全国で30店を展開するライフセレクトを軸に地域シェアを拡大している。ライフセレクト出店の効果は大きく、地域におけるお客さまの利用状況に変化をもたらしている。

 ライフセレクトのような5000坪(1万6500平方メートル)前後の超大型店の場合、店舗開発にも時間がかかる。既存店からの転換を含めて年間15店の出店を計画するが、新規出店は簡単ではない。ただ、潮目が変わり始めたことも感じている。当社がライフセレクトを展開していることが認知され、他業界からのアプローチが増えたからだ。

 ライフセレクトでは、DX化で店舗力を高める取り組みにも積極的だ。店舗DXは、営業効率の向上に限らず、お客さまへの安心価格保証や買い物の利便性など、さまざまな側面でプラスに働いている。昨年11月にオープンした「テックライフセレクト仙台あすと長町店」(仙台市太白区)は店舗におけるデジタル化を加速し、ECとリアル店舗の関係性や使い分けに、より価値を実感してもらえる店づくりを行っている。その1年前にオープンした「LABIライフセレクト茅ヶ崎」(神奈川県茅ケ崎市)にも、あすと長町店に初導入したスマートカートといった店舗DXを導入し、ライフセレクト進化版としての展開を進めている。

 当社は約10年をかけて「暮らしまるごと」提案ができる改革を進めてきた。外的要因で一時的にマイナスになっている面はあるが、構造改革により成長の道筋はつけている。店舗開発、SPA(製造小売り)商品の強化、EC事業の拡大、事業会社のシナジーという四つに取り組めば、必ず成長できると思っている。

 SPAもかなり幅広の品ぞろえになった。例えば、リモコンで高さを変えられる電動昇降テレビスタンドは、家電量販店らしい商品だと思っている。電動ソファや電動ベッドなどもそうだ。大型テレビの前に電動ソファを展示した提案は当社だからできることで、大塚家具の調達ルートを生かした100万円を超える高級家具も各地で売れるようになってきた。

 昨年は外的要因に左右されることが多かった分、今年はエンジンをかけていく必要がある。店舗開発が主力にはなるが、SDGs(持続可能な開発目標)を見据えて環境事業にも当社は力を入れている。

 店舗で回収した家電品をリユース工場で再生し、アウトレット店で販売するという他社にない循環型ビジネスを構築しているが、まだ欠けているピースがある。一気通貫で環境事業に取り組めるよう、今後は最終処分場も自社で持つ考えだ。エネルギープラントの新設も計画している。家電量販店という枠を超えた取り組みで、中期経営計画で掲げた2025年3月期で売り上げ2兆円の達成を目指している。

 当社は2兆1500億円が過去最高の売り上げだ。現在はそこまでの売り上げ規模はなく、家電だけでそれだけ稼げる市場環境でもない。

 そのため、「暮らしまるごと」提案するための構造改革を断行してきた。住空間全体を提案できる商材をそろえ、粗利ミックスによる競争力を付けてきた。その強みを最大限に生かして成長につなげていく。