2023.09.21 コネクターメーカー、次世代データセンター向け高速伝送ソリューションの技術開発が活発

次世代データセンター向けの112ギガbps対応高速伝送コネクター

 次世代データセンターやAI(人工知能)サーバー等での高速伝送要求に対応し、コネクターメーカー各社の高速伝送対応接続ソリューションの技術開発が活発化している。各社は、112ギガ/224ギガbps対応などの高周波・高速伝送対応コネクターやケーブルアセンブリーの先行開発に注力する。

 5G通信やビッグデータ、AI、IoTなど、クラウドデータ量の増大に伴い、これらのデータをより早く、安定した通信を行うことが求められている。このため、データセンターでは現在、伝送速度の主力が56ギガbpsに移行しているが、次世代の112ギガbps伝送に向けた技術開発も急ピッチで進んでおり、徐々に実用化が進む見通し。さらに、次々世代の224ギガbpsについても数年後には実用化が予想されている。

 DCでは、情報システム機器を運用するために必要な物理的スペースと電源や空調設備等が重要なため、運用にかかる負担を軽減することも課題。また、DCは電力も大量に消費するため、電力消費量の抑制技術も求められている。

 欧米系や日系コネクターメーカーでは、こうしたニーズに対応するため、112ギガbps PAM4対応などの高速伝送ソリューションの開発を強化し、先進的なソリューションを提案する。

 TE Connectivity(日本法人=タイコエレクトロニクスジャパン)は、次世代ハイスピード製品として、112/224ギガbps用のコネクターやケーブルアセンブリーの研究開発を強化している。現在は56ギガbps品を量産中だが、今後は112ギガbps対応のコネクターやケーブルアセンブリー、CPUソケット、スイッチチップ向けソケットなどが徐々に立ち上がる見通し。さらに今年の米デザインコンでは初めて224ギガbps対応コネクター試作品の動作デモを実施した。

 224ギガbps対応品開発では、設計をすべて見直し、ケーブルのターミネーションでの信号劣化を抑制する構造設計を施すことで、いち早く試作品開発に成功した。

 山一電機は、業界初のVLC(バーチカル・ライン・カード)プラットフォーム対応の垂直型OSFPコネクター「OSFP-VLC」を開発した。

 VLCは米ヌビス・コミュニケーションズ社が発表したプラットフォーム。DCの高速化、高密度化のボトルネックであるASICと光トランシーバーI/Oの距離を解決でき、また既存の技術(モジュール、実装技術、信号伝達技術)のみの使用で112ギガbps伝送対応のDC内機器を低コストで構築可能。さらに縦型ラインカードの構造上で生じるスペースと正面パネルからのエア取り込みで冷却性能が向上し、低消費電力を実現。OSFP-VLCは24年の量産化を目指している。

 ヒロセ電機は今春、最大112ギガbps PAM4の伝送速度に対応する雌雄同形の基板対基板コネクター「IT14」シリーズをリリースした。米モレックス社開発の「Mirror Mezz」のセカンドソース品。モレックスのMirror Mezzは、「オープン・コンピュート・プロジェクト(OCP)」のアクセラレーターモジュール(OAM)の基板対基板コネクターとして採用され、大手半導体メーカーのASICやGPUのチップセットなどの接続にも使用されている。

 ケルは、今年6月の「COMNEXT2023」で、開発中の224ギガbps(PAM4)差動伝送ケーブル用コネクター「HSPシリーズ」を初出品した。

 (22日付の電波新聞/電波新聞デジタルで詳報します)