2023.09.25 グーグルとNEC、海底ケーブルにマルチコアファイバー より多くのデータ伝送 製造・メンテを迅速化

マルチコアファイバー技術でケーブルの容量を拡大する

大陸間をまたぐ光海底ケーブルのイメージ大陸間をまたぐ光海底ケーブルのイメージ

 米グーグルとNECは、海底ケーブルでマルチコアファイバーを採用することを決めたと発表した。場所は、台湾やフィリピン、グアム、カリフォルニアを結ぶ「台湾-フィリピン-米国海底ケーブル」(各国の通信事業者と共同で構築予定)で、業界としては初めて。より多くのデータを伝えられ、製造やメンテナンスなどが迅速にできる。

 従来の海底ケーブルでは、電力は岸側から供給され、専用のポンプ・レーザーが各ファイバーの光信号を増幅することで、データを配信している。近年、「空間分割多重」の技術導入で、一つのケーブル内のファイバー数を拡大することができるようになった。これによってビット当たり、よりコスト効率の高いレートで大容量の海底ケーブルを提供でき、増加し続ける需要に対応できる。

 ただ、同技術でも拡張性の問題に直面し始めている。各ケーブルのファイバー数を増やすためにケーブルの外径を広げると、さまざまな原材料や重量が増加するため、海上での運用やメンテナンスに負担をかける。さらに、ファイバーを増やすには、製造や試験、修理に要する時間が大幅に増加する。

さらに拡大へ

 こうした中、シングルコア光ファイバーを進化させたマルチコアファイバー技術に期待がかかる。光を閉じ込め伝搬させるためにガラスコアをガラスクラッドで囲む、従来のシングルコア光ファイバーをベースにしたもの。コア数を2倍に増やすことで、同じファイバー素線のまま、ビット当たりのコストを抑えながら、より多くの光と情報を伝送することができる。

 また、従来のシングルコア光ファイバーで実装された同等のコア数と比較して、ファイバー心数を減らすことができるために、より迅速な製造、試験、保守作業を可能にする。

 両社は、マルチコアファイバーは世界の通信インフラにとって重要な技術と指摘。業界で求められる帯域幅への要求を満たすことを目指し、今後ファイバー当たりのコア数を拡大するための第一歩となる、とみている。

 世界のデジタル化が進むにつれて指数関数的に増加する帯域幅への要求に合わせて、大陸間をまたいでデータを伝送する光海底ケーブルの帯域幅の拡張も求められる。クラウド企業とネットワーク事業者は、ネットワークの耐障害性と容量を向上させる技術発展を目指している。