2024.01.18 【情報通信総合特集】生成AIが「大きな変革もたらす」

自律搬送ロボットの活用など製造現場のDXも進んでいる

情報サービス関連市場、デジタル投資が活発化
DXに加えGXにも

 情報サービス関連市場は、2024年も堅調に推移しそうだ。社会環境がコロナ禍以前に戻る中、多くの企業は成長への地盤固めに向けデジタルへの投資を活発化させている。電波新聞社が行った情報サービス関連各社トップインタビューでは、昨年急速に広がった生成AI(人工知能)はIT市場に「大きな変革をもたらす」と多くの企業が認識。これまでデジタルトランスフォーメーション(DX)の主役だったクラウドやIoTに、グリーントランスフォーメーション(GX)も加わり、生成AIと組み合わせた新たなサービスも続々と登場しそうだ。

生成AI

 社内外の業務効率化に生成AIを導入する動きが加速している。富士通は、顧客企業の課題に応じて生成AIをカスタマイズして生産性向上や効率化を支援する取り組みを強化する。

 日立システムズは、生成AIを使った社内の業務革新ワーキンググループを23年10月に立ち上げた。社内業務を見直して活用策を探っている。

 日立ソリューションズ・クリエイトは、生成AIの課題を整理しつつ、ソリューション事業として独自性のあるサービス展開を検討する。

 三菱電機ITソリューションズは生成AIを、社内DXやクラウドパッケージへの組み込みなど外販事業でも活用していく。

 OKIは生成AIなどAIの技術進化を取り込み、強みを持つアナログ技術と掛け合わせた価値創出を目指す。

 日本事務器は、自社商品、顧客展開、社内活用のプロジェクトチームを立ち上げ生成AI導入を推進する。

 アドバンスト・メディアは主力のAI音声認識技術をベースに、アプリやサービスを目的特化型プラットフォームとして市場展開を進める。

 TOKIUMは、書棚で眠っている紙の書類をスキャンしてデータ化し、生成AIが読み込んで企業経営への示唆を出す仕組みの構築に取り組む。

 製造現場での活用も進む。NECプラットフォームズは、生成AIとIoTセンサーを組み合わせるなど製造現場での活用に向けて動き出した。

 MODEは、クラウド型IoT基盤サービスに生成AIを組み込み、建設や工事現場の業務効率化を後押しする。

 生成AIに対応した研修も始まった。富士通ラーニングメディアは、24年度から生成AIへの指示の最適化に向け、プロンプトエンジニアリングに準拠したコースも用意する。

DX

 DX需要は引き続きIT市場をけん引している。NECは、DXの実現に必要な自社の強みを集約させた共通基盤「NEC Digital Platform」をコンサルティング起点で推進。

 NECソリューションイノベータは、血中のタンパク質から将来の疾病を予測する「フォーネスビジュアス」の展開を強め、ヘルスケアに注力する。

 NECネクサソリューションズは、中堅中小企業向けに安価で導入しやすいソリューション展開を推進する。

 日立ソリューションズは、開発したアプリケーションを素早く実行できる基盤として独自に開発した「デジタルソリューション創出プラットフォーム」の提供範囲を拡大する。

 大塚商会は、幅広い商材やサービスを生かして企業の課題を解決する「オフィスまるごと」の推進に向けた組織改革を行い、営業力を強化。子会社のOSKは、基幹系と情報系を組み合わせた「DX統合パッケージ」で業務効率化を支援する。

 BIPROGYは、DX案件に積極的に取り組み、将来のアウトソーシングビジネスの拡充を目指す。

 NSWは、メインフレーム環境をクラウド環境などへ移行する支援をScalar社と連携して始めた。

 DX人材育成も重要なテーマだ。NECネッツエスアイは、DX人材の育成だけでなく、業界知識を持つ他業界からの採用を進めており、今後さらに強化する。

 キヤノンマーケティングジャパンはグループ社員全員がDX検定・DXビジネス検定を受検し、人的資本の底上げを図った。

 リコーは、デジタルアカデミーを国内に創設するなどデジタル人材の育成に力を入れている。

 デジタル技術を活用した製造現場の業務改善も進む。三菱インフォメーションシステムズは、製造業の工程管理を支援するMES製品が好調で、スマート工場化をさらに推進していく。

 サンテレホンでは製造現場のネットワークカメラが伸長。人流分析などへの展開を加速させる。

サイバーセキュリティーやカーボンニュートラルに対応
IT技術で課題解決

 被害が深刻化するサイバーセキュリティーやカーボンニュートラルなど山積する課題に、強みを持つIT技術で貢献する取り組みも活発だ。

 セキュリティーでは、三菱電機は工場の生産ラインに関わるOTセキュリティーに踏み込み、診断からコンサルまで含めた事業化に向けた取り組みを加速させる。

 三菱電機インフォメーションネットワークは、ハイブリッドワークに対応したセキュリティー環境を強化するほか、工場内のデータの流れを監視する領域に本格的に乗り出す。

 脱炭素化に向けては、日立製作所は新しい系統運用のシステム「次期中央給電指令所システム」などを広げて電力の安定供給に取り組む。

 エプソン販売は、紙の繰り返し循環を実現する独自の「ドライファイバーテクノロジー」を官公庁や金融、製造業などに対して訴求していく。

 働き方改革を支援するのは内田洋行だ。働く環境の構築を支援する事業部を新設したほか、執務空間や会議室がデジタルでつながり、働く環境を自在にコントロールするハイブリッド・ワークプレイスの提案を進める。

 先端技術の開発も進む。東芝デジタルソリューションズは量子技術の社会実装を加速するため、英国に「量子技術センター」を開設。膨大な選択肢から最適な解を見つけるソフト「シミュレーテッド分岐マシン」を実際の株式取引にも応用した。

 東芝情報システムは、東芝グループで共同開発した、観測困難な微小傷を可視化できる新技術の量産機の販売を開始する。

 東芝テックは、画像認証とAI防犯システムを導入して店舗運営の省人化・自動化を目指す次世代スマートストアの運用を始めた。

 アイティフォーは、ブロックチェーン(分散型台帳)技術を使い、貸金庫と終活ノートを組み合わせた「デジタル貸金庫」の事業化を目指す。

 サポートサービスも効率化が進む。NECフィールディングは、インフラの設計・構築から保守まで一貫してサポートする「トータルサポートサービス」を推進する。

 東芝ITサービスは保守網を生かした第三者(サードパーティー)保守について、国内企業とも協業した支援を強化していく。

 OKIクロステックは、GXを注力分野に加え、パナソニックと連携してEV(電気自動車)充電施設の保守にも乗り出した。

 Dynabookは、IT資産の導入から廃棄までを代行管理するライフサイクルマネジメントを強化している。

 一方、電通総研は、電通国際情報サービスから社名を変更した。事業領域の拡張と経営基盤の刷新を図る。

 創立60周年を迎えるアイコムは、「100年企業」に向けてESG経営や人材確保、情報発信を推進する。