2024.02.19 日本電子の理科教育支援活動 電子顕微鏡で体験型授業 観察の楽しさ伝えて通算800回

電子顕微鏡の仕組みを学ぶ授業(石巻市立山下小学校)

夏休みイベント「かわさきサイエンスチャレンジ」に出展。操作体験で電子顕微鏡の魅力を伝える夏休みイベント「かわさきサイエンスチャレンジ」に出展。操作体験で電子顕微鏡の魅力を伝える

 日本電子は、子どもたちに科学の楽しさを伝える理科教育支援活動として、自社の卓上走査電子顕微鏡(SEM)を使った出前授業を行っている。2007年からこれまで約800回開催した。

 当初、本社のある東京都昭島市や近隣の小学校などで実施していたが、11年に発生した東日本大震災後は復興支援として東北地方の小学校でも開始し、毎年訪問を続けている。

 昨年5月に新型コロナウイルス感染症が5類感染症となり、出前授業や科学イベントの開催依頼は増加。高校からの申し込みも増えている。

 授業では、電子顕微鏡の仕組みを学ぶ講義のほか、電子顕微鏡を操作して植物の花粉や昆虫の体などを観察した。

 3Dメガネで電子顕微鏡写真を立体的に観察したり、アクリル樹脂で固めた昆虫や植物の実、貝などの標本のスケッチをしたりする。

 昆虫などを近くで見る機会が少ない子どもたちが、標本を手に取ってじっくりと「観る」ことで、新しい世界に興味が湧くように創意工夫を凝らしている。

 こうした体験型の授業に対し、子どもたちからは「飼い猫3匹のキューティクルの違いに驚いた」「細部まで分かって面白い。身近なさまざまな物を調べたくなった」「机上の勉強だけでなく直接実物に触れたことは非常に勉強になった」「将来は電子顕微鏡を使った仕事に就きたい」、担当教諭からは「児童とともに多くの学びを得ることができた」など、微細な世界への興味や電子顕微鏡についての関心が寄せられている。

 Webサイトの理科教育支援コンテンツも拡充している。SEMや高倍率で観察した動物や植物の仕組みについて学べる冊子「新SEM散歩」、動画「特別天然記念物ニホンライチョウの羽を電子顕微鏡でみてみた」、電子顕微鏡写真のクイズ「複眼のふしぎ」などを公開している。

 同社は戦後まもなく電子顕微鏡を開発し、日本で初めて輸出した。ノーベル賞受賞者の研究開発を支える電子顕微鏡と同様に、核磁気共鳴装置(NMR)も日本で初めて商用機を開発するなど、理科学・計測機器のパイオニア企業。

 出前授業のほかにも社会貢献活動として、1968年から電子顕微鏡を使う若手研究者を支援する風戸研究奨励会、19年から高校生を対象とした「ノーベル受賞者を囲むフォーラム~次世代へのメッセージ」(読売新聞社主催)、21年からは科学技術振興機構と駐日ポーランド大使館が共催する「羽ばたく女性研究者賞(マリア・スクウォドフスカ=キュリー賞)」に協賛している。

 これからも未来の科学技術を担う人材育成を継続していく考えだ。