2024.05.20 日本のAI企業、米国の15分の1 ペガサス・テック・ベンチャーズCEOが出遅れ指摘

「日本が生成AIの市場を取れれば大きなチャンスになる」と語るウッザマン創設者兼CEO

昨年の「スタートアップワールドカップ2023」では、AI搭載の医療機器を開発するアイリス(東京都中央区)が優勝した昨年の「スタートアップワールドカップ2023」では、AI搭載の医療機器を開発するアイリス(東京都中央区)が優勝した

 スタートアップを対象にした世界最大規模のピッチコンテスト「スタートアップワールドカップ2024」の京都予選が21日に開催される。予選に合わせ来日した主催の米ペガサス・テック・ベンチャーズのアニス・ウッザマン創設者兼CEO(最高経営責任者)に、世界の投資の動きや見通しを聞いた。

 ―世界の投資動向について教えてください。

 ウッザマンCEO 2023年の世界の投資動向をみると、この5年で最低レベルとなり、18年比で38%減となった。21~22年はスタートアップの上場や資金調達を円滑にするSPAC(特別買取目的会社)上場やリバース・マージャー(逆さ買収)が流行り、一気に投資が拡大したが、23年は20年の投資規模に落ち着いた。

 この1年の投資先をみると、生成AI(人工知能)が好調で前年比9%伸びている。半導体と電池も良かった。

 ―24年の動きはいかがですか。

 ウッザマンCEO 24年1~3月期は前四半期よりも伸びており投資は上向き傾向にある。引き続きAIが先導するとともにヘルスケアが好調。調達額もAIの領域が全体の17%を、ヘルスケア領域が全体の24%を占めた。特にAIは世界のGDP(国内総生産)を今後10年で1050兆円引き上げるという調査もあり、日本が生成AIの市場を取れれば大きなチャンスになる。

 だた、AI関連企業が1位である米国の4643社に対し、日本は294社しかなく8位と出遅れている。

 ―今後成長が期待できる領域は。

 ウッザマンCEO SDGs(持続可能な開発目標)は注目度が高い。なかでも廃棄物のアップサイクル(創造的再利用)や生分解性素材、エネルギーマネジメント、太陽光や風力などのグリーンエネルギー、カーボンキャプチャー(二酸化炭素回収)の領域が伸びる。

 技術領域ではマテリアルサイエンスが伸びており、リチウムイオン電池やグラフェン、ペロブスカイトの領域は日本が強いのでチャンスがある。サイバーセキュリティーも注目度が高い。そのほか、量子コンピューターやニューロテクノロジー(脳神経科学技術)、自動化や自動運転、メタバース、バイオテクノロジーが成長領域だ。

 ―日本のスタートアップが世界に羽ばたくためには、どうすればよいでしょうか。 

 ウッザマンCEO 日本のスタートアップは世界に比べて数が少ないが、政府の支援も本格化しているので追い風にはなっている。まずは国内だけに目を向けず、最初からグローバルを見てほしい。グローバルなベンチャーキャピタルと連携してもよいし、シリコンバレーなどとのグローバルチームで取り組んでもよい。ぜひユニコーン企業を目指す精神を持ってほしい。

(21日付電波新聞/電波新聞デジタルで詳報します)