2020.05.19 Let’s スタートアップ! akippa営業力・人間力で危機を突破、必要とされる駐車場シェアサービスで急成長

 成長が著しいスタートアップ企業を取材。その新しいビジネスの息吹や事業ヒントを探る「Let’s スタートアップ!」。

 第1回は、駐車場シェアリングサービスを手掛け、駐車場予約アプリ「akippa(アキッパ)」を提供するakippa(アキッパ)。

 2014年からサービスを開始。この分野でのトップ企業にまで成長した。同社サービス誕生の経緯や成長要因、展望を石川絢子・広報グループ マネージャーに聞く。

石川絢子(いしかわ・あやこ)・akippa 広報グループ マネージャー
大学卒業後、ソーシャルゲーム事業を展開するグリーで、新規事業立ち上げや広報を経験。akippaが展開する“攻め”の広報活動に興味を持ち、2018年に入社。現在、同社の広報マネージャー。

aippaが提供する駐車場シェアリングサービス

 観光やスポーツ観戦に出掛けた時に空き駐車場が見つからず困ったことはないだろうか。akippaは、その問題を解決する駐車場シェアリングサービスを展開している。

 使い方はこうだ。サービスを利用したい人は、まず、スマホで、駐車場予約アプリ「akippa」をダウンロードし、ユーザー登録する。

 そして、利用したいエリアで登録された駐車場をアプリから検索・予約する。駐車場の利用時間は15分単位。利用料金はクレジット決済をされ、手数料が差し引かれてオーナーに支払われる。

 一方、空いている駐車場やスペースをサービスに提供したい個人や法人は、駐車場のオーナーとして会員登録する。すると、アプリ上に、提供する駐車場が表示される仕組み。サービスは、オーナーとユーザーの両方から支持を集め、年々利用者が増えている。

サービスの登録駐車場数は、全国で約3万5000カ所まで増加

純粋な営業会社として創業

 駐車場シェアリングサービスで急成長するakippaだが、創業当初は全く異なる事業を展開していた。

 akippaは、金谷(元気・代表取締役社長CEO)が、2009年に設立した「ギャラクシーエージェンシー」からスタートしました。

 当初は、携帯電話やウオーターサーバーなどを法人に販売するほか、自社で求人媒体を作り、その求人広告を売っていました。当時は、純粋な営業会社でした。

 創業以来、事業の売上げは伸びていました。一方で、営業で稼ぐ労働集約型ビジネスのため、日々の収入は確保できるものの、利益はなかなか出ませんでした。

当時、金谷は、会社が大きく成長することの難しさに直面していたといいます。そして、打開策が見いだせぬまま、資金流失が続き、数年後、会社は大きな危機を迎えました。運営資金が底をついてしまったのです。

「当時は、純粋な営業会社でした」と話す石川マネージャー

起死回生の策は後先が逆?

 会社存続危機に直面して、金谷はベンチャーとしては、遅ればせながらの行動に出ました。

 書店に行って資金繰りに困った時の対策などが書かれたハウツー本を手に取ったのです。そうした本から、スタートアップに出資をするベンチャーキャピタル(VC)の存在を初めて知り、インターネットでVCを探して、次々と投資依頼のアポを電話でかけていきました。

 もちろん、これは一筋縄ではいきませんでした。ようやく、その中で一社だけ、出資に応じてくれた会社がありました。意外にも業界大手のVCでした。

 しかも、そのVCが出資に応じてくれたのは、事業の将来性やアイデアに対してではなく、会社としての営業力や金谷社長の人間性からだという。

 当時の金谷は、まだ駐車場シェアリングサービスのアイデアもなく事業計画書の書き方すら知らない状態でした。それでも営業会社として培った営業力や人間性を見て、「金谷さんなら何かやってくれそうだ」と出資を決断してくれたのです。

「“なくてはならぬ”をつくる」から発想された
駐車場シェアサービス

 akippaでは、VCの出資を受けてから、「“なくてはならぬ”をつくる」を会社のミッションに掲げ、世の中の困り事を解決するビジネスを模索する。

 金谷は、連日、社員全員を集めて自社の事業のコンセプトを出す話し合いを行いました。会議では社員に日々の困り事を紙に書き出してもらうことで、ビジネスの種を探そうとしたのです。

 すると、求人広告とデザインを担当していた女性社員がある提案をする。それが「駐車場を使いたい時に利用できるようにする」というサービスの提案だった。

 このアイデアが基盤となり、金谷社長は、駐車場シェアリングサービスのプロジェクトチームを結成。アプリの開発を開始し、2014年4月にサービスをスタートさせた。2015年2月には、社名を現在の「akippa」に変更し、駐車場シェアリングサービスを事業の核に据えたのだ。

得意の「営業力」に「広報力」を掛け合わせ成長を加速

 akippaは、駐車場シェアリングサービスで自治体との連携事業に取り組むほか、2019年10月にはSOMPOホールディングスとも提携し、駐車場開拓のパートナー(代理店)制度を導入。その結果、2020年4月時点で、会員数が約180万人、駐車場登録数は全国約3万5000カ所まで拡大した。

 石川マネージャーは、同社の成長要因に創業時の営業会社時代に培った営業力を挙げる。また、事業を始めたタイミングも大きく影響したという。

 もともと法人向けの営業会社だったこともあり、サービスに不可欠な駐車場を確保するために、駐車場オーナーを開拓する営業力は社員に備わっていました。

 また、当社のサービスはオーナーとユーザーのどちらも得をする仕組みです。それが強みとなって駐車場を次々と開拓できました。

「得意の営業力に加え、広報戦略が成長につながった」と説明する石川マネージャー

 さらに、私たちがサービスを始めた頃は、まだ大手企業がこの分野に参入していませんでした。そのため、観光地や駅近などニーズの高い駐車場を先に確保できたことは大きかったと思います。

 2016年ごろには大手企業が何社か参入してきましたが、駐車場で苦労されたようで、2年ほどで撤退していきました。

 加えて、事業を拡大するために「広報活動」を戦略的に行ったという。

 一般的に、スタートアップは、事業の開始直後には、ビジネスを軌道に乗せることに全力を注ぐ。そのため、広報活動は後回しになるケースが多い。

 しかし、akippaでは、サービスを始めてから、すぐに積極的な広報活動を展開した。広報担当者が、毎日のようにプレスリリースを作成、メディアに送り、電話をかけ続けたという。

 サービス初期はマーケティングを行う余力もなかったため、その分を広報で補うことにしました。

 これには、駐車場の開拓では、聞いたこともないベンチャーの人間に声をかけられるよりも、マスコミで紹介されたことがあるベンチャーの営業担当者が声をかける方が、オーナーも安心して話を聞いてくれるのではという狙いもありました。

 この戦略は功を奏した。個人間で様々な物を共有する「シェアリングサービス」は、当時、目新しかったこともあり、テレビや雑誌などで多く取り上げられたのだ。その結果、会社の知名度は向上。駐車場開拓の大きな追い風となった。

「行きたいところに行ける」を助けるサービスを目指す

akippaが、今後、目指すところは、どこだろうか。

 日本は今後、高齢化が進み、移動が難しい人が増えていきます。そして、電気自動車(EV)を使った自動運転車やITなどを活用した次世代交通システム「MaaS(Mobility as a Service:サービスとしての移動)」が、そうした人たちの手助けになると思います。

 そして、MaaSでは発着場所は不可欠です。当社では、ここに目を付けています。例えば、EVの運用では、個人の駐車場を活用して、充電スポットとして利用してもらうようなサービスを考えています。

 この新しい取り組みを通じて「行きたいところに行け、会いたい人に会える」ように手助けをするサービスを、今後は構築していきたい。

 そして、将来的には、日本で構築したシステムをアジアや世界中で展開することで「時価総額で世界一の企業なる」という目標を掲げています。

今、必要としているもの

 最後に、石川マネージャーにakippaにとって、今、一番必要なものを聞いた。

 「駐車場」です。まだまだ全然足りていません。私たちの理想は、オフィス、イベント会場を問わず、「どこにでも駐車場がある」ことです。

 今は新型コロナウイルスの影響もあって、観光やイベントといったレジャーよりも、通勤で車を使う人が増えています。

 そのため、オフィス街近くの駐車場が、これからどんどん必要です。そのニーズに応えるためにも、「もっと!!駐車場」というのが、私たちが今、一番に求めていることです。(談)

(取材・写真:庄司健一)
社名
akippa
URL
https://www.akippa.com/
代表者
金谷元気・代表取締役社長CEO
本社所在地
大阪市浪速区難波中2丁目10番70号 なんばパークスタワー14F
資本金
20億円(資本準備金含む)
設立
2009年2月2日
事業内容
駐車場シェアリングサービス、駐車場予約アプリ「akippa」の運営