2020.05.22 太陽光発電を主力電源化へ 太陽光発電協会がビジョン 50年に電力需要の約30%

 太陽光発電協会は、50年に向けて国内の太陽光発電や関連産業の展望について、ビジョンをまとめ公表した。パリ協定の長期目標の達成を重視し、50年には導入量で300GW、国内電力需要の約30%を賄う試算を提示。太陽光発電自体を「主力電源化」する必要性も打ち出した。

 公開したビジョンは「PV OUTLOOK 2050」。副題に「感染症の危機を乗り越え、あたらしい社会へ『太陽光発電の主力電源化への道筋』」と添えた。同協会は、02年にビジョンを示して以来、数年に1度、改訂する形で公表。直近では17年6月に発表している。「多面的に検討し、緻密に試算してビジョンを示し、業界内外で共有したい」(同協会)との考えだ。

コロナの影響でエネルギー転換が加速

 今回のビジョンでは、新型コロナウイルス感染拡大にも考慮。「人に優しいエネルギー社会への転換点」と位置づけ、ビジネスやライフスタイルが変化することで、「エネルギー転換への加速が急速に進む」と指摘した。

 国内のビジネスの現場でも、SDGs・RE100やESG投資、EVシフトといった五つの潮流が強まっていることに言及。「待っている間に機会を失うリスクもある」として太陽光発電のビジネスモデルを変革する必要性を示した。

 さらに、パリ協定を受けて国が設定した、二酸化炭素(CO₂)排出量を「50年時に80%削減」する目標達成を重視し、太陽光発電の普及度合いを見直した。17年のビジョンでは、50年時の導入量を200GWと想定していたが、80%削減の達成のために不足するとして、今回は「最大化ケース」と位置づけて、300GWに広がる試算を提示した。

カギ握る蓄電池や、ソーラーシェアリングの拡大

 その道筋として、消費エネルギーのうち約半分を化石燃料から電力にシフトさせたり、電力を低炭素化させたりする必要がある。一方で、太陽光の普及には変動性の対応として、蓄電池の導入が重要になる。その担い手と期待されているのが電気自動車(EV)だ。300GWに広げるためには、軽油貨物車の半数と、その他の車種全てがEVとなり、計6000万台が普及することなどが条件とされた。

 また、具体的には住宅や工業団地等の施設用地といった需要地に計147GW、湖などの水上や耕作地といった非需要地に計153.3GW導入されると想定。作物を栽培する農地の上部にパネルを並べるソーラーシェアリングなどが注目されている中、「今後は非住宅建物や農業関連への導入が重要となる」と指摘した。

火力上回る太陽光、「便益」も黒字転換

 その際、国内の電力需要に占める割合も大きく伸びる。18年実績で太陽光発電は6%を占めたが、50年には31%に達する。電源構成比で火力(25%)や風力(15%)、原子力(11%)などを上回ると見込まれる。

 同協会は、300GWへの拡大について「国が示している再エネ主力電源化のためには、太陽光の主力電源化が不可欠だ。電力需給シミュレーションなどを用いて、現実味のある数字を提示した。方法次第で導入が可能なことを示している」と話す。

 また、ビジョンでは、再エネ導入が固定価格買い取り制度(FIT)などで国民負担が増大していることが課題となる中、海外から輸入する化石燃料が減少することなどから生じる「便益」との比較を詳細に検討して試算。その結果、「35年から便益が費用を上回り、累積便益も56年に黒字転換」することなどが示された。