2024.07.05 【やさしい業界知識】炊飯器
高級機の販売が伸びる
ご飯のおいしさにこだわり
調理家電の主力商品の一つ炊飯器は、普及率は高く、家庭での必需品として定着している。コロナ禍で巣ごもり消費が拡大し、内食化の傾向が強まったことにより、ご飯のおいしさにこだわりを持つユーザーが増え、高級炊飯器の販売が伸びている。
IH式が中心
現在市場では、お米のおいしい炊き上がりに不可欠な高火力を実現するIH(電磁加熱)式が市場の中心となっている。出荷台数ベースで全体の2023年度は73%(日本電機工業会=JEMA調べ)を占めるまでに拡大している。
炊飯器については、インバウンド需要が拡大した15年度に前年比6.7%増の578万6000台へと出荷が伸びたが、米食からパン食へと食生活が変化しているほか、インバウンド需要も徐々に縮小し、炊飯器全体の需要は伸び悩んだ。
コロナ禍の20年度には、巣ごもり消費の拡大で内食化の傾向が強まったこともあり、560万台程度の比較的高い水準での需要はあったが、21年度以降は需要が毎年縮小したまま現在に至っている。
23年度は、前年度比93.8%の454万2000台となり、4年連続のマイナスで推移している。
全体の需要が伸び悩んでいる中で、ご飯の食味や食感を追求した高級タイプが市場でも人気だ。コロナ禍の20年度を底に21年度以降、市場では炊飯器の平均単価が上がっており、JEMAベースでの平均単価は23年度に2万2000円強まで高まった。ここ10年では最も高い平均単価となっており、価格が4万円以上の高級機種は台数ベースで約6割になっている。
炊飯器はもともと、電熱ヒーターで加熱するマイコン式が主流で、現在も低価格機種や小容量タイプで採用されているが、1988年に業界初となるIH式炊飯器をパナソニック(当時は松下電器産業)が製品化した。
高火力で炊き上げるIH式の炊飯器は、その後各社から市場投入され、IH式による炊き上がりのおいしさが徐々に浸透。現在では炊飯器全体の中で7割を超えるところまで構成比を高め、炊飯器の主流となった。
IH式炊飯器の中でも、さらにおいしい炊き上がりを追求して、10万円を超えるような高級炊飯器も登場。三菱電機が06年に内釜に炭を使った「本炭釜」を投入以来、各社独自の内釜開発や加熱技術を進化させ、10万円以上の高級炊飯での商品戦略が活発化、おいしさへのこだわりを持つユーザー層を開拓した。米食が減少しているとはいえ、少なくとも一日に一度ご飯を食べる人も多く、おいしさへのこだわりの潜在的なニーズは強い。
コア技術を追求
おいしさを追求するコア技術の一つが内釜で、銅やアルミ、ステンレスなどを使った金属鍋や土鍋まで、各社こだわりの内鍋を開発。火力がしっかり伝わる、熱伝導性の高い素材を厳選して、おいしい炊き上がりを追求する。
また、電磁コイルを改良して、よりかまど炊きに近い炊き方を追求するなど加熱方式や炊飯プログラムの進化により、おいしい炊き上がりにこだわった商品開発が進む。
このほか、炊飯器でもIoT化が進み始めており、銘柄米に合わせた炊飯プログラムのアップロードなどによるおいしさの進化、お米の自動再注文、遠隔操作、離れた家族の見守りなど便利さ、安心機能も充実、より使い勝手が向上している。
(毎週金曜日掲載)