2020.06.26 【オフィスソリューション特集】ニューノーマル対応に転換働き方改革やテレワークで新たなビジネスチャンス
新型コロナウイルスの感染拡大で、働き方改革やテレワークの普及が加速し、働く環境は一変。オフィス市場をけん引してきた複合機(MFP)・プリンタを中心に据えるビジネスモデルも大きな転換点に差しかかった。
ニューノーマル(新しい日常)に対応した新たなビジネスモデルをどう提案していくのか、正念場を迎えている。
これまで進めてきたハード中心の「モノ」から、ソフト、サービスを中心にした「コト」への訴求転換がますます求められる。
近年、複合機の国内出荷台数は伸び悩み、15年の約60万台をピークに減少傾向が続いていた。
19年は、この減少傾向に歯止めがかかって52万8000台となり、18年の52万7000台をわずかながらも上回った。
特に年後半は、消費税増税効果もあって出荷台数が増え、上昇の兆しが見られたのは好材料といえる。
20年については、新型コロナの感染拡大もあり先行き不透明感が出ているものの、複合機やプリンタを活用した新しい価値提案は間違いなく浸透しつつある。
こうした中、本格的に導入が進む働き方改革への対応やテレワーク環境の整備が、新たなビジネスチャンスとなっている。
働き方改革関連法の対象が4月から中小企業にも拡大された。
日本の企業の90%以上を占める中小企業には専任の情報システム要員がおらず、デジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)、働き方変革が遅れている。
中小企業庁の調べでは、中小企業の6割がITを使っているが、その3分の2は給与・経理などの内部管理にとどまり、ビジネスに直結した〝攻めのIT〟とは程遠い。
同庁は「ITを使いこなして経営の見える化を実現し、〝稼ぐ力〟を伸ばすべきだ」と指摘。中小企業の働き方改革にどう貢献していくか、大きなテーマとなっている。
もう一つが、コロナ禍で導入が待ったなしとなったテレワークへの対応だ。
〝いつでも・どこでも働ける環境〟の整備が、コロナの感染拡大に伴う在宅勤務、テレワークの導入で加速している。
在宅勤務が本格化し、企業のテレワークの実施状況もこの一カ月で様変わりした。
東京商工会議所による直近の「テレワークの実施状況に関する緊急アンケート」(5月29日-6月5日)では、テレワークの実施率が67.3%となり、同会議所が3月に行った調査に比べて41.3ポイントも増加した。実施企業のうち、52.7%は緊急事態宣言発令以降から実施したという。
また、内閣府が全国1万人を対象に行った調査(5月25日-6月5日)では、全国で34.6%、東京23区で55.5%がテレワークを経験したという結果が出ている。
各社、安心・安全な環境提案
生活様式が変わり、在宅勤務、テレワークが定着し始めているものの、オフィスと同じセキュリティを担保したネットワーク環境や、稟議(りんぎ)申請、契約など安心・安全に働ける環境の実現には課題も多い。
「新型コロナの影響で在宅勤務、テレワークなど働き方も大きく変わってきた。働く場所はオフィスだけではない。家庭でもオフィスと同じセキュリティ環境が求められている。ネットワーク環境の整備をはじめ、デジタルサービスを通して、付加価値を提供していくことが重要」(リコージャパン)。各社は、テレワーク環境をサポートする提案を活発化させている。
富士ゼロックスは「会議・商談」「情報共有」「報告・連絡・相談」「社内申請」「契約」の五つのシーンおよびITインフラなど「環境」の切り口で捉え、これらの課題をリモートアクセス、ペーパーレスファクス、ネットプリントなどのソリューションで解決する提案を行う。
社外からセキュアに社内へアクセスするリモートアクセスサービスの契約数は、緊急事態宣言以降、前年同期比8倍の大幅な伸びで推移。
ペーパーレスファクスや電子サインサービス、社内文書回覧のニーズなどによってテレワーク関連ソリューションが大きく伸びている。
リコーは、同社の新世代複合機とシスコシステムズのクラウド管理型ネットワークセキュリティソリューションをワンパッケージで提供しているが、ここにきて需要に拍車がかかっている。
セキュアなネットワーク環境の構築と、様々なクラウドアプリケーションによる生産性向上が評価された。
自宅から会社のデータへ安全にアクセスでき、印刷も行えるVPN環境を簡単・手軽に構築できるサービスも始めた。
キヤノンマーケティングジャパンでは、オフィス複合機と連携するテレワーク環境構築の支援サービスを5月20日から3カ月間無償で提供している。
紙文書のデータ化をはじめクラウドストレージとの連携、受信したファクスの電子化など、テレワークを効率化する。
6月上旬から業界最高クラスのスキャナを搭載した複合機の新製品22モデルを投入しており、紙文書の電子化などの提案に注力していく。
東芝テックは、強みであるOCR技術を生かしたソリューションに力を入れる。複合機のOCRアプリやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用した自動化、AI(人工知能)OCRといった働き方改革を支援するソリューションを強化する。
コニカミノルタジャパンは、自社実践で得た知見をベースに、生産性や創造性を高める新しい働き方を支援する「いいじかん設計」のコンセプトの下、テレワークに関する潜在的な課題の解決に向けた最適なテレワーク対応ソリューションを訴求してきた。
今回、中小企業のテレワーク導入における課題解決のため、人事労務関連業務を提供する社会保険労務法人TRIPORTと協業。ITサービスの提供だけでは解決しない人事や労務などの課題解決を目指す。
また、企業のDXを促進するため、複合機とITを一体化した「ワークプレイス ハブ」を5月から販売している。
DX、テレワークをはじめとするITサービス環境の整備の一方、オフィス以外のアプローチ開拓も重要になってきた。
エプソンは「スマートチャージ」で文教市場向け施策「アカデミックプラン」を提案し、大幅に伸長。20年度は病院など医療向けソリューションを本格展開し、オフィス市場に加え、文教、医療戦略を加速させる。
コロナ禍で病院経営は厳しさを増しているが、同社では印刷速度の速さやランニングコスト面などインクジェットの優位性、さらに、非常時のBCP(事業継続計画)対策としてもメリットをアピールしていく。
紙を再生する乾式オフィス製紙機「PaperLab」とスマートチャージで、環境配慮型のエコオフィスの提案にも力を入れる。
東芝テックは、環境に配慮した「消す印刷」と「残す印刷」を1台に搭載し、紙のリユースを実現したハイブリッド複合機Loopsシリーズの専用サイトを6月から一新した。モニターも継続し、環境対策をもう一歩進めたい企業への訴求を強化する戦略だ。