2025.01.09 完全自動運転の実現へ!GPUクラスタによる自動運転AI開発

ガグルクラスター内部の様子

ガグルクラスター内に設置されたH100ガグルクラスター内に設置されたH100

TD-1を搭載した自動運転車両TD-1を搭載した自動運転車両

TD-1搭載車両のコクピットTD-1搭載車両のコクピット

 自動運転車の実現に向け、世界中で技術開発が進んでいる。現在、米国ラスベガスで開催中の最先端テクノロジー見本市「CES 2025」でも、自動運転を見据えた最新技術が多数紹介されている。完全自動運転を実現するには、センサーやカメラ、LiDARなどを備えた車両開発もさることながら、リアルタイムに情報を処理するためのデータセンター(DC)のような計算基盤が必要となる。

 Turing(チューリング)は、完全自動運転技術の開発に取り組むスタートアップ企業。2021年の創業以来、AI(人工知能)をベースとした自動運転システムを開発するとともに、自動運転車両での実証などを重ねている。同社は昨年10月末、完全自動運転を実現するための専用計算基盤「Gaggle Cluster(ガグルクラスター)」を構築し、運用を開始した。ガグルクラスターの構築は、NTTPCコミュニケーションズによる技術的な支援とNTTドコモ・ベンチャーズによる出資で実現。同計算基盤によりTuringは自動運転モデル開発を加速させる。

エヌビディアのGPU「H100」を96基搭載

 ガグルクラスターはエヌビディアのGPU「H100」を96基搭載したTuringの専用計算基盤。エヌビディアのインフィニバンド「NDR400」を用いたネットワークを使用することで、大規模AI学習で複数のGPUを同時に使用する際にボトルネックとなっていたサーバー間の通信速度制約を最小化しているほか、All-Flash分散ストレージを採用することで分散学習における性能を最大限に引き出した。クラスタ全体を「単一の計算機」として利用することで、大規模な深層学習タスクに最適化されている。ガグルクラスターは、データセンターおよび相互接続サービスなどを提供するMCデジタル・リアリティの「NRT10データセンター」(千葉県印西市)に構築された。NRT10は膨大な電力消費量を必要とするGPUにも対応する電力供給能力を備え、運用時の排熱を効率的に冷却できる設備を有している。

完全自動運転プロジェクト「Tokyo30」に挑戦

 Turingは現在、2025年内に東京の市街地において30分以上の完全自動運転(SAE Internationalが定めるレベル5の水準)の実現を目指すプロジェクト「Tokyo30」に取り組んでいる。ガグルクラスターの活用により、独自の自動運転AI「TD-1」を開発し、走行試験を開始。Tokyo30プロジェクトの実現に向け、着実に動き始めた。TD-1はカメラ画像の情報だけで周辺地図、車両および歩行者の認識、車両の運転操作までを単一モデルで対応する自動運転AIだ。

 Turingの山口祐CTOは「世界的にも完全自動運転AIの開発競争が加速する中、計算資源を早期に確保することが重要だった。最大のパフォーマンスを発揮できる高性能GPUクラスタを稼働できたことで、今まで以上に完全自動運転AI開発をより加速していく」と話す。

自動運転AIに加え生成AI開発にも活用

 ガグルクラスターは自動運転AIの開発のほか、生成AI開発にも活用する。24年8月には自動運転向け生成世界モデル「Terra」、同年9月には自動運転向けVLAモデルデータセット「CoVLA Dataset」を発表。これらにより、現実世界の物理法則や物体間の相互作用など、複雑な状況を理解した上で高度な判断ができる自動運転システムの開発を進めている。こうした生成AI技術を自動運転AIに統合し、早期の完全自動運転実現に貢献していく。