2025.01.09 CES 2025 SDVの開発を加速する協業相次ぐ
QNXとマイクロソフトの協業により車載ソフト開発が加速
自動車の制御や機能をつかさどるソフトウエアを更新することで、機能や性能を高めることができる自動車「SDV(ソフトウエア・デファインド・ビークル)」が注目を集めている。現在、米国ラスベガスで開催されている最先端テクノロジーの見本市「CES 2025」でもSDVに関わる技術が数多く紹介されている。
本田技研工業(ホンダ)とルネサスエレクトロニクスは米国現地時間の7日、SDV用の高性能SoCの開発契約を締結したことを発表。ホンダがプレスカンファレンスで公開した新たなEV(電気自動車)「0(ゼロ)シリーズ」への搭載を予定している。開発するSoCは業界トップクラスとなるAI(人工知能)性能2000TOPS、電力効率20TOPS/Wの実現を目指す。
SDVの核となるセントラルECUに搭載
ゼロシリーズは、顧客一人一人に最適化した移動体験を提供するため、ホンダ独自の本格的SDVとなる。ゼロシリーズでは、自動車のシステムを制御する役割を担う複数のECUをコアECUに集約するセントラルアーキテクチャーを採用する。SDVの中心となるコアECUは、自動運転およびADASといった運転支援やパワートレイン制御、快適装備など、車両のさまざまなシステムを一元的に管理するため、より高性能なSoCが求められる。ルネサスエレクトロニクスは最先端のチップレット技術を活用し、SoCにAIアクセラレーターを追加することで、AI性能の向上とカスタマイズを可能にした。従来よりも高い処理能力と低消費電力化を実現する。SoCはTSMCの自動車向け最先端プロセス3ナノメートルテクノロジーを使用する。
ソフトウエア分野ではマイクロソフトとQNXが協業
CES 2025では半導体などのハードウエアだけでなく、ソフトウエア分野での協業も発表されている。加BlackBerryの事業部門で車載向けOSやミドルウエア、開発ツールなどを提供するQNXは、マイクロソフトとの協業を発表した。この協業により、自動車OEMはクラウド内でソフトウエアの構築、試験、改良を容易に行える環境を実現し、SDVの開発期間短縮が可能となる。
協業の一環としてQNXの組み込みソフトウエア「SDP8.0」が、近日中にマイクロソフトのクラウド基盤「Azure」に対応する予定。これにより、開発エンジニアは幅広い業種で実績を持つ堅ろうなクラウド環境を活用し、SDVをはじめとする次世代の車載アプリケーションで使用されるソフトウエア開発、試験、統合が可能となる。QNXとマイクロソフトは将来、同ソリューションを共同で拡張していく計画。その対象には、QNXの「Hypervisor」やデジタルコックピット開発を実現するための革新的なリファレンスアーキテクチャー「Cabin」も含まれる予定だ。
SDVの開発期間短縮に貢献
マイクロソフトのマニュファクチャリング&モビリティ部門のダイアン・ロドリゲスコーポレートバイスプレジデントは「QNXと当社のコラボレーションにより、最先端技術を通じてイノベーションを加速させ、自動車業界に活力をもたらすことができる。AzureとQNXはその強みを組み合わせ、自動車OEMがSDVに求められる期待に応えられるようサポートする」と話す。
QNXはCES 2025においてAzure対応SDP8.0が開発者にもたらすメリットを訴求するデモを実施。ソフトウエアの早期テストと妥当性確認を仮想的に行うことで、開発プロセスの早期において潜在的な問題を特定・解決できる方法を紹介する。