2025.01.15 エヌビディアの斬新なAIが自律走行車をさらに飛躍させる
エヌビディアの三つのコアコンピューティングシステム
米国ラスベガスで開催されたCES 2025が10日(現地時間)閉幕した。この世界最大規模のテクノロジー見本市において、最も注目を集めたのは米エヌビディアだろう。同社は、CES 2025という晴れの舞台で、AI(人工知能)技術のリーダーとして業界にその名を深く刻んだ。実際、エヌビディアのアクセラレート・コンピューティングとAIプラットフォームは、さまざまな業界の進歩を後押ししている。中でも自動車の進化にAIは欠かせない。AIの革新は、将来の自律走行車を実現する上で間違いなく重要なものとなるだろう。
エヌビディアの創設者兼CEOであるジェンスン・フアン氏は、CES 2025開催前の基調講演で、AIは驚異的なペースで進歩していると述べた。さらに自社のGPUとプラットフォームがこの変革の中心にあると指摘。その言葉通り、同社の技術がゲーム、ロボット工学、自律走行車など、幅広い業界のブレークスルーを可能にしている。
フアン氏は「AIは画像、言葉、音を理解する知覚AIから始まった。その後、テキスト、画像、音声を作成する生成AIが登場した。そして今、われわれは 『物理的AI 』の時代に突入している。『物理的AI 』とは、前進し、推論し、計画し、行動することができるAIのことである。エヌビディアは、20年にわたるオートモーティブ・コンピューティング、安全に関する専門知識、CUDA AVプラットフォームによって、数兆ドル規模の自動車業界を変革していく」と話した。
初のエンド・ツー・エンド自律走行プラットフォーム
エヌビディアの自律走行革命の中核をなすのは、最新のDRIVE Hyperionプラットフォームである。「このプラットフォームは、新しいNvidia AGX Thorシステムオンチップ(SoC)を統合し、より安全でスマートな自律走行車を実現するために、ハードウエア、ソフトウエア、および生成AIの機能を統合している」(フアン氏)。
NVIDIA DRIVE AGX Hyperionは、業界初かつ唯一のエンド・ツー・エンドの自律走行プラットフォーム。NVIDIA AGX Thorとリファレンスボード設計のほかに、このプラットフォームにはNVIDIA DriveOS車載オペレーティングシステム、センサースイート、アクティブセーフティーおよびレベル2+ドライビングスタックも含まれている。
フアン氏はまた、CESにおいて、NVIDIA DRIVE AGX Hyperionが、自動車グレードの安全性とサイバーセキュリティーに関する認証機関TÜV SÜD(テュフズード)とTÜV Rheinland(テュフラインランド)による業界安全性評価に合格したことも発表。この実績は、自律走行車の安全性、革新性、性能の水準を引き上げるものとなる。
広がるコラボレーション
メルセデス・ベンツ、ジャガーランドローバー、ボルボ・カーズなどの主要な自動車OEMも、NVIDIA DRIVE AGX Hyperionプラットフォームを採用している。同プラットフォームはモジュール式に設計されているため、顧客は必要なものを簡単に使用することができる。また、拡張性があり、将来のDRIVE SoC世代間でアップグレードが可能。互換性もあるよう設計されている。
エヌビディアのパートナー企業が拡大する中、今回大きなインパクトを与えたのがトヨタ自動車との協業。トヨタはエヌビディアのアクセラレーテッド・コンピューティングとAIを活用して、一般車および商用車の車両を構築する計画だ。具体的には、トヨタは次世代車両をNVIDIA DRIVE AGX Orinで構築し、安全認証を受けたNVIDIA DriveOSオペレーティングシステムを稼働させる。機能的に安全で高度な運転支援機能の提供を目指す。
エヌビディアは、①車載コンピューター「NVIDIA DRIVE AGX」②車両からのデータを処理しAIモデルを訓練する「NVIDIA DGX」③ソフトウエアを動作させる「NVIDIA OVX」――という三つのコアコンピューティングシステムと、エンド・ツー・エンドの自律走行車開発に不可欠なAIソフトウエア「Omniverse」と「Cosmos」を提供している。OmniverseとCosmosは、シミュレーションで自動運転システムのテストと検証を行う。フアン氏は「NVIDIA DRIVEは、新しい時代のために作られたものであり、比類のない機能安全とAIを提供する」と話す。
今回のCESを契機に自律走行車の技術開発は、さらに進展すると見込まれる。その技術開発を担うエヌビディアのGPUおよびプラットフォーム。今後の自律走行車の商業利用や一般車両への搭載に期待がかかる。