2025.01.22 「アナログICはシミュレーションし切れないから面白い」 半導体業界、若手の本音 エイブリック①

左から平賀さん、阿江さん、鈴木さん、王さん

 今、成長分野として注目を集めている半導体業界で働く若い世代の声を届ける企画。アナログ半導体の設計・製造・販売を行うエイブリックの若手4人にインタビューを行った。全3回のうち1回目となる今回は、彼らがなぜ半導体業界に入り、なぜ今の配属に至ったのか、教えてもらった。

【ご協力いただいた若手社員の皆さん(五十音順)】
阿江和音(アエ・カズネ)さん   3年目 デバイス開発を担当
鈴木涼太(スズキ・リョウタ)さん 4年目 半導体製造を担当
平賀康弘(ヒラガ・ヤスヒロ)さん 2年目 設計・開発を担当
王佳藝(ワン・カゲイ)さん    2年目 設計・開発を担当

業界に入ったそれぞれの理由

―なぜ半導体メーカーに就職したのですか。

王さん 学生時代の専門とは異なるのですが、半導体分野は将来性を感じたため、業界に入りました。特に私の出身である中国で普及しつつある電気自動車への用途など、需要の高まりも感じました。

阿江さん 私も専攻は情報系で、半導体は専門外でした。ちょうど就職活動の時期に半導体を扱う授業を受ける機会があったのですが、その時に全然内容が理解できず、理解したいと思ったのがこの業界に就職してみたいと思ったきっかけです。もともと大学入学前は電気電子系に進もうと考えていたのもありますね。

鈴木さん 私は学生時代、半導体の関連分野を専門にしていました。専門は太陽電池デバイスで、自然と半導体の道を選びました。エイブリックは、インターンシップで先輩と話したとき距離が近く感じられ、働きやすそうだと思い就職しました。

平賀さん 所属していた研究室がエイブリックと共同研究をしており、そこで半導体の面白さを知りました。電子回路を学び、教科書に書いてあるだけだった数式が物理現象につながるのが面白いと思いました。規模が大きく個人で把握し切れない組み込みシステムよりも、自分で全体を理解し切れるIC設計の方が肌に合っているというのもあります。

なぜエイブリックに入ったか

―エイブリックの主力はアナログICですが、デジタルICではなくアナログICに携わろうと思ったのはどうしてですか。

平賀さん アナログは1と0だけじゃない、シミュレーションし切れない世界で、だからこそ面白いんです。

阿江さん 私は、アナログICを扱っている企業は多くないので希少性があり、手に職を付けられるかなと思ったからです。

―エイブリックは自社で工場がある垂直統合型の企業ですが、設計開発に特化するファブレスではなくそちらに就職したのはどうしてですか。

鈴木さん 私はもともと設計開発にも製造にも関心があったので、入社後にどうするか考えられるエイブリックは良かったです。

王さん 工場を持っていることで設計に自由度が生まれるのは大きいです。自社のファブを使えた方が顧客とコミュニケーションを取りやすい面もあると感じます。

「『熱い人』と働きたい」と語る鈴木さん

配属でもさまざまな希望

―皆さんは今の配属を自分で希望したのですか。

鈴木さん そうですね。設計開発にも興味があったのですが、私が製造を希望したのは、「熱い人」が好きでそういう人の下で一生懸命働きたかったからです。

平賀さん 私は医療用ICの設計開発部門に所属しているのですが、今までやってこなかった分野なので、そこで自分の幅を広げたかったからです。研究室ではエイブリックと共同研究していたので「げたを履かせてもらっている」感覚があり、未知の分野に身を置くことで、自分に言い訳できないようにしたかったんです。

王さん どの製品群も私にはチャレンジなので特に製品に関しての希望はなく、中国系の顧客が多いリチウム保護IC関連を希望しました。

―入社後の研修はどういうものでしたか。

阿江さん 入社後半年間は研修期間なのですが、そのうち3カ月程度同期とチームで活動する機会があり、同期と仲良くなれたのがよかったです。

【エイブリックについて】

 さまざまな民生機器、モバイル機器、車載や医療機器向けにアナログ半導体を製造するメーカー。現セイコーインスツルのCMOS IC製造事業が元で、2018年に現社名にて独立、2020年にはミネベアミツミグループに統合。東京都港区に本社を構え、千葉県松戸市と秋田県大仙市に工場がある。