2025.01.23 「コミュニケーションも重要な業務」 半導体業界、若手の本音 エイブリック②

左から平賀さん、阿江さん、鈴木さん、王さん

 今、成長分野として注目を集めている半導体業界で働く若い世代の声を届ける企画。アナログ半導体の設計・製造・販売を行うエイブリックの若手4人にインタビューを行った。全3回のうち2回目となる今回は、実際に会社で働くようになって感じた思いを聞いた。

【ご協力いただいた若手社員の皆さん(五十音順)】
阿江和音(アエ・カズネ)さん   3年目 デバイス開発を担当
鈴木涼太(スズキ・リョウタ)さん 4年目 半導体製造を担当
平賀康弘(ヒラガ・ヤスヒロ)さん 2年目 設計・開発を担当
王佳藝(ワン・カゲイ)さん    2年目 設計・開発を担当

他部署、社外と関わる

―就職前と後でギャップはありましたか。

 平賀さん 私は半導体分野の研究室に所属していた時の経験から、回路の新規開発の仕事がメインだと考えていたのですが、就職してみて評価や解析のような業務の重要性を知りました。そういう業務に当たる時間は長いし、ビジネスとしても大切です。それに気づいたことで、設計開発だけではなく製造のセクションにも関心を持つようになりました。

 王さん 私も設計に専念するわけではないことを実感しました。私は出身である中国語の語学力を生かして営業もしていますし、資料作成や他部門とのコミュニケーションといった業務もあります。設計に専念するとどうしても外の声が聞けなくなるので、顧客のニーズを把握しておくことは重要だと思うようになりました。

「入社して回路の新規開発以外にも興味が広がった」と語る平賀さん

―ほかの部門でもそうしたコミュニケーションが重要になることがあるのでしょうか。

 鈴木さん 私が所属する製造部門では、製造装置の顧客側としてメーカーとやりとりすることがあり、的確にニーズを伝えることが重要です。私自身は、昨年12月に開催された半導体の技術展「セミコンジャパン2024」に行ったのですが、初めての経験で少し萎縮してしまったと反省しています。

 阿江さん デバイス開発部門では、外部の方というより社内の他部門とのコミュニケーションが大切です。設計サイドが何を求めているか把握する必要があります。

部署内の先輩を頼る

 平賀さん コミュニケーションは同じ部署の先輩を頼るという意味でも大切だと思います。私は、不具合解析を担当することになったとき、何が原因か自分だけでは分からなかったことがありました。どういう不具合を想定してどういう評価を行うか、何が分からないかなど、的確に言語化して周りに頼らなければ、解決できませんでした。

 鈴木さん 私は現在製造ラインを一から作らなければならない案件の副責任者を担当しており、責任者の上司から教えてもらいながら進めています。どこかが少しでもおかしいとそれだけで製造ができなくなるので、責任重大で大変な仕事ですが上司を頼りながらなんとかやっています。

 王さん 私は就職後初めて半導体に関わっているので、配属されたばかりの頃は分からないことだらけで、特に周りに聞くことが必要でした。先輩も忙しく聞きづらい時もあるのですが、素直に頼るのが一番効率的だと考えています。

 平賀さん 自分も少し聞きづらいなと感じることがありますが、雑談でカバーするようにしていますね。

 阿江さん 私はあまり雑談が得意な方ではないので、質問する先輩を分散させるようにしています。

手を挙げやすい空気

 平賀さん 社内のコミュニケーションで言うと、手を挙げたら仕事を任せてもらえる土壌があることも感じています。私も配属されて半年ほどで「これをやりたい」と希望した仕事をやらせてもらいました。

 阿江さん 私の部署では定期的な面談の機会を設けてもらい、自分の希望を伝えています。

 鈴木さん 私もやりたい仕事には自分から挙手するようにしていますし、私が現在一つの案件の副責任者を担当しているのも、若手にどんどん仕事を振ってくれる空気だと感じます。成長スピードを上げることにもつながっていると感じます。
 
【エイブリックについて】

 さまざまな民生機器、モバイル機器、車載や医療機器向けにアナログ半導体を製造するメーカー。現セイコーインスツルのCMOS IC製造事業が元で、2018年に現社名にて独立、2020年にはミネベアミツミグループに統合。東京都港区に本社を構え、千葉県松戸市と秋田県大仙市に工場がある。