2025.07.31 【家電流通総合特集】後半戦の取り組み パナソニックマーケティングジャパン 堤篤樹社長

堤 社長

「新販売スキーム」をさらに拡充

 コロナ禍で落ち込んでいた家電販売も2024年に底を打ち、上向いてきた。昨年は猛暑や寒波の影響でエアコンが年間を通じて良かった。今年度も早い時期からの猛暑もありエアコンが引き続き好調で全体をけん引している。自治体の補助金活用などもあり中上位機の販売も堅調だ。

 国内市場は少子高齢化が進み人口が減少している半面、世帯数は増加し、特に1~2人の小人数世帯が増えてきた。こうした環境の中、これまではファミリー層向けには高機能の上位機を、個人には理美容商品などを提案してきたが、小人数世帯で、コンパクトで高機能な機種への需要が増えていることから、小人数世帯をターゲットにした商品提案を本格的に始めている。

 昨年はドラム式洗濯乾燥機で新たにコンパクトモデルのSDシリーズを発売したほか、冷蔵庫では300リットルクラスでありながら上質な商品を発売した。こうした商品は中小型機でもフラッグシップ機の機能を搭載している。引き合いも良く、販売も順調だ。

 25年度は新たな需要を創造する商品展開を強化するとともに、20年度に始めた指定価格制度などの「新販売スキーム」をさらに拡充させる。指定価格商品も拡大し、テレビや炊飯器の新モデルは廉価モデル以外が指定価格になるなど幅が広がっている。

 商品力のあるモデルは「ワンプライス」で展開していく計画だ。24年度の指定価格商品の売り上げ構成比は34%だったが、今年度は50%を超える見込みで、非常にうまくいっている。

 量販店と取り組む実需連動SCM(サプライチェーン管理)も進んでいる。冷蔵庫や洗濯機などからスタートし、一部法人では商品の範囲を拡大。店舗側から当社側の在庫状態を確認しながら最適な在庫管理を進めており成果も出てきた。AI(人工知能)も活用しながら精度を高めている。この仕組みが浸透すれば、量販店側も安心して販売ができると思っている。

 指定価格の導入により量販店と専門店の価格差がなくなってきたことも成果だと感じている。現在、販促支援の一環で期間販促という取り組みを行っているが今後は量販店や専門店の特性に合わせた支援を進めたい。PS連合会とも話し合い、パナソニックフェアに合わせた販促支援なども検討している。

 今年度から、電器店経営を学び事業拡大につなげていく研修「PS次世代経営創成塾」をスタートした。第1期は全国から108店163人の申し込みがあり、店主や子息、従業員も参加する研修が始まっている。

 店づくり、客づくり、人づくりから、経営戦略の立案まで五つのステップで学んでいく。これまで組織ショップ向けに個別に研修をしていたが、今回の研修は組織ショップ以外の店が経営を直に学べる場になっており、商売につなげていってほしい。

 商品面では小世帯向けに群で展開を図っていく。今後、洗濯機、冷蔵庫、オーブンレンジ、食器洗い乾燥機、スチーマー、ベーカリー、マッサージチェア、テレビといったカテゴリーで商品が増えてくる見通しだ。コンパクトモデルでもフラッグシップ機の機能が入った商品を展開することで新たな需要を発掘していきたい。1~2人世帯や高齢者世帯など、これから増えてくる世帯に合った商品展開を目指す。9月から新たなプロモーションも始め、価値を訴求する計画だ。

 量販店、専門店、ダイレクト(直販)の三つの販売チャンネルに合わせた施策を打っているが、各チャンネルでパナソニックファンを作れるようにしていく。直販ではリファービッシュ家電(メーカー再生中古品)の販売やサブスクリプションの提案も進めており順調に伸びている。ダイレクトからロイヤルカスタマーになってもらえるようにしたい。