2020.07.09 【家電流通総合特集】 電気製品認証協議会、Sマークの啓蒙活動に力家電のネット活用の遠隔操作で運用基準を見直し

広報イベントなどでSマークの認知度向上に取り組む

「製品安全セミナー」で電気製品の安全性確保に向けた重要性を発信「製品安全セミナー」で電気製品の安全性確保に向けた重要性を発信

SマークのロゴSマークのロゴ

 電気製品の安全性を評価するSマーク認証制度を運用する電気製品認証協議会(SCEA)は、一般消費者への啓蒙(けいもう)活動に力を入れるとともに、家電のインターネット等を活用した遠隔操作に関するSマーク運用基準を見直し5月に定めるなど、時代に合わせた対応を進めている。

 Sマークは、事業者の自己確認を補完する役割を担っており、欧米諸国で一般化している民間機関による第三者認証制度のことだ。製造物責任法(PL法)の導入を契機に電気製品に対する自己責任原則が強まったことで、導入するメーカーが増えてきた。現在の普及率は70%を超える水準になる。

 SCEAの役割は普及の拡大とともに、Sマークが家電の安心・安全マークとして消費者に認知してもらえるようにすることだ。メーカーにとってSマーク認証の取得は任意だが、SCEAはその重要性を訴え続けてきたことで、テレビや洗濯機、電子レンジに至っては、国内販売されている製品の9割以上でSマークが取得されている。

 SCEAの会員は現在、学識経験者、43関係団体、4認証機関で構成。94年12月、第三者認証制度の公平な運営と普及を目的に発足し、翌年から第三者認証(Sマーク認証)業務を開始した。Sマーク認証制度は認証を希望する製品とその工場を第三者(認証機関)が専門的な立場で検査し安全基準への適合性を客観的に証明する。

消費者浸透に向けて

 近年、SCEAが重視しているのが消費者へのSマークの浸透だ。Sマーク付き電気製品の安全性を理解してもらうために、毎年2回販売店で広報イベントを実施している。

 96年10月にSマークの普及促進を図るため、幹事会の下に「広報専門部会」を設置して活動を開始したのが、その始まりだ。初代部会長には当時の日本電気大型店協会(NEBA)の常務理事が就任し、広報の在り方について検討を始めた。

 その後、01年から06年までは東京都が実施している「くらしフェスタ東京」に出展し、Sマークの広報イベントを実施。07年からはイトーヨーカドー(東京都)店頭で実施し、09年からはユニー(愛知県)も加えて、年2回消費者に向けてSマークの広報と認知度調査を行っている。

 昨年10月にはイトーヨーカドー大森店(東京都大田区)で広報イベントを実施。今年2月にも広報イベントを予定していたが、残念ながら新型コロナウイルスの影響により中止している。

遠隔操作の運用基準

 スマートフォン・AI(人工知能)スピーカなどから遠隔操作できる機器が増えるにつれ、SCEAも対応を強化している。5月には遠隔操作に関するSマーク認証の運用基準を制定した。

 遠隔操作は、13年5月にエアコンについて運用基準を定め、その後も運用基準を見直している。15年1月には、エアコン以外の機器にも適用範囲を拡大できるように運用基準の見直しを行った。今回、遠隔操作できる機器の普及に伴い運用基準を見直し、二つの運用基準を一つにまとめ新たに制定。なお、今回の運用基準では、遠隔操作機構に対するリスクアセスメントの実施が一部の製品に求められ、リスクアセスメントを実施した製品であることを示す追加表示、「RC Ready」(遠隔操作=Remote Control=機能を準備された意味)を表示できるよう内規を定めた。追加文字の表示は任意だ。遠隔操作の運用基準に既に適合し認証を取得している場合、来年5月までの猶予期間に変更点への対応を求めている。

Web展開も強化

 13年には啓発用DVDをYouTubeにアップするなど、Web展開を強化している。若年層にも親しみやすい漫画でSマークを解説した小冊子も作成。A4サイズのパンフレットとともにQRコードを印刷しており、スマホから簡単にSCEAのWebサイトを閲覧できるようにしている。

 SCEAの概要を紹介する冊子も刷新。消費者向けに分かりやすくSマークを説明するWeb上の専用ページも開設し、スマホ用サイトと合わせて順調にアクセス数を伸ばしている。海外メーカーにもSマークの価値をアピールするため、英語と中国語のWebサイトも作成している。

 さらに普及拡大に向け、全国電機商業組合連合会の消費者啓発事業で、Sマークを紹介するパンフレットを配布している。東京都発行の「電気ポットによる子供のやけどに注意!」の中で安全性の高い電気ポットを選ぶポイントとしてSマークが紹介されるなど、啓発活動が実を結ぶような事例も出てきた。

 電気製品の安全性確保をテーマにした「製品安全セミナー」を今年1月に都内で開催。新型コロナの影響はあるものの、今後も流通関係者向けのセミナー開催を検討していく。

普及調査

 96年7月に初めて店頭調査を実施した時のSマークの普及率は20.7%にすぎなかった。翌年には大手家電メーカーがSマーク取得に乗りだしたことで一気に普及率は60%以上に高まり、その後着実に普及率を高めてきた。16年11月の調査ではSマークの普及率は72.5%となったが、海外メーカーの家電製品が日本市場で増えていることもあり、18年度では71.1%の普及状況となっている。

 対象となる店舗数や調査機種数は96年の3店舗・334機種から19年には34店舗・9133機種に拡大。日本百貨店協会や日本チェーンストア協会、家電量販店、全国電機商業組合連合会、日本DIY・ホームセンター協会、日本通信販売協会(JADMA)の各団体および店舗の協力を得て実施している。

 調査したのは炊飯器や電気ポットなどの電熱器具、冷蔵庫やエアコンなどの電動力応用機械器具、テレビなどの電子応用機械器具。普及率は洗濯機が最も高く98.2%、次いでテレビが95.3%。電子レンジが91.2%、冷蔵庫が88.2%など国内メーカーの割合が高い家電製品の普及率は高くなっている。

認証の信頼性向上へ

 SCEAではSマーク認証の信頼性向上へ、基本問題専門部会において、ルールづくりや追加基準の制定などを進めているほか、市場買い上げなどを実施している。

 09年度からはSマーク認証製品の市場買い上げを実施。19年度も12機種を購入し、認証時との同等性の確認を行い信頼性向上に努めている。13年5月にはエアコンの遠隔操作機構に関するSマーク認証の運用基準を制定。15年4月には電球形LEDランプの追加基準を改定。同7月にはエアコン以外の製品の遠隔操作機構に関するSマーク認証の運用基準を制定し運用を開始するなど、技術的信頼性確保に向けた様々な活動を行っている。

 北陸3県が共同で実施したヘアドライヤの安全性テストによりSマーク取得製品が推奨されるなど、Sマーク取得製品の信頼性が自治体などを通して情報発信されるようにもなっている。

電気用品安全法(01年施行)とは

 対象は「特定電気用品」(116品目)と「特定電気用品以外の電気用品」(341品目)に分類。

 「特定電気用品」は電気便座や電気マッサージ器など水に関連する製品や人が直接触る製品。「◇PSE」マークを表示する。

 一方、「特定電気用品以外の電気用品」は冷蔵庫やテレビなど大半の電気製品が対象。「○PSE」マークが表示される。