2022.03.15 【ルームエアコン特集】高付加価値の機種に関心、省エネ・快適・清潔など多機能に

付加価値を訴求しやすい高級機の提案に力が入る

快適性や清潔性機能などの訴求も重要快適性や清潔性機能などの訴求も重要

 ルームエアコンは、1000万台超という過去最高の出荷台数を記録した2020年度から需要の反動で、今年度は、直近のデータとなる1月まで8カ月連続で前年を割る出荷台数となっている。21年4月から22年1月までの累計でも1割程度前年割れとなっているが、年間では900万台の出荷規模が見込まれ、いまだ高水準だ。特に省エネ性に優れ、付加価値の高い機種への関心が高い。おうち時間を快適に過ごすための「投資」を惜しまない消費傾向は依然として続いている。

 エアコンでは、快適性や省エネ性は以前から重要な開発テーマとして追求されてきた。ここ数年の上位機種には、人工知能(AI)を搭載し、家庭ごとに使い方が異なる操作を学習し、最適な温度環境を実現するような製品も登場している。

 同時に、重視されているのが清潔性だ。コロナ禍を経てその傾向は一層強まっており、室内機の熱交換器を大量の結露水で洗浄したり、加熱して除菌したりする技術の実装などが進んでいる。消費者に分かりやすい清潔機能であるため、販売店側にとっても提案しやすい。

IoT対応が進む

 また、白物家電の中でもいち早くIoT対応が進んだのもエアコンだ。IoT化により、従来リモコンを使って操作していたことをスマートフォンでできるようになった。置いた場所が分からなくなりがちなリモコンに対して、いつも身につけているスマホをリモコン代わりに使える利点は明確である上、スマホからの遠隔操作で帰宅前に電源を入れておけば、帰宅してから暖める/冷やすといった時間的なロスがなくなる。同時に帰宅と同時に快適な室内環境が実現されていることになる。

 IoT化を生かし、機器同士の連携も進み始めている。例えば三菱電機は、感染症対策として関心の高まる換気ニーズに応えることを目指し、エアコンの赤外線センサーを利用して住宅用換気扇と連携した運転を実現している。在室人数によって換気風量などを自動で調整する形だ。エアコンもIoT化を生かし、コロナ禍のニーズに応える機能の実装が加速している。

夏場へ早めの提案

 高級機を中心に旧型品との入れ替えもこの時期になるとほぼ終わる。季節の変わり目としてエアコンの利用頻度が一時的に少なくなるが、逆に夏場の最盛期に向けて早めの提案に乗り出す時期。新製品として付加価値を訴求しやすい高級機で単価アップを図りたいところだ。

 夏前には梅雨も控える。普及機にはない除湿機能の訴求も重要。新型コロナだけでなく、雨によって在宅時間がただでさえ増える傾向にある梅雨時期をより快適に乗り切る提案に向け、売り場では除湿機能の分かりやすい訴求チラシやPOPなどが求められる。

 エアコンは、高級機になればなるほど多機能となり、機能があり過ぎてポイントが伝わりにくい面も指摘される。消費者が購入を検討する時期に合わせて、訴求する機能やポイントを変える工夫も売り手側には必要だ。

 主力家電の中でもエアコンは、出荷台数が増える傾向にある数少ない製品。同時に国内外から参入する企業も増えた。また、家電量販店がオリジナル製品を販売するようにもなっている。

寒冷地で普及進む

 競争が激しさを増す半面、北海道や東北などの寒冷地へのさらなる浸透と同時に、世帯当たりの設置台数の増加は今後も続くはずだ。設置後は一定周期での買い替え需要も期待できる。

 エアコンは高単価な製品だけに、普及機でボリュームを稼ぎ、ブランド認知を高め、高級機の購入につなげる流れも大事だ。メーカーにとって、夏に向かうこれからがエアコン販売の本番に突入する季節といえ、販促策や販売に力が入る。