2025.07.11 【電子部品技術総合特集】ニチコン 石田雅彦執行役員コンデンサ事業本部技術センター長
コンデンサーに注力
材料開発など基礎研究推進
ニチコンは、成長市場にフォーカスを当てて、事業基盤を拡充する中で研究開発を進めている。コンデンサ事業ではxEV(電動車)用のコンデンサーやPV、PHEVのオンボードチャージャーなど自動車向けを成長市場と捉え取り組んでいる。また、情報通信機器のAI(人工知能)サーバー向けやIoT関連のエッジデバイス向けも成長市場と見る。
今年度が最終年度の中期経営計画の中で研究開発投資は約330億円。ここ数年はハイペースで研究開発投資を続けており、今年度は昨年度と同等の75億円を見込んでいる。この中でコンデンサー事業の研究開発にも力を入れている。
長野県にある技術センターでは研究開発の中心的な役割を果たしている。材料開発などコンデンサー構成する時に必須となる材料の開発など基礎研究を進める。また、福井、岩手のそれぞれの工場に技術組織を配置。ここでは足元に直結している開発を進め、基礎研究から足元の研究など広範囲で網をかけて体制を整えている。
技術センターでは、新素材や新材料を探索する中で大学などと連携し、事業化に向けて取り組む。福井、岩手では技術センターと連携しつつ、新しく開発した材料を取り入れ、アセンブリー技術、量産化技術の向上を目指している。海外では中国の宿遷で、中国国内マーケットを見ながら情報通信向けの研究開発を進めている。
他社との連携では、小形リチウムイオン二次電池・SLBシリーズの開発に際し、電池メーカーとアライアンスを組み、材料技術を向上。結果、研究開発時間の短縮に成功し、早期のマーケット投入に結び付いた。
大学との連携でも、東京大学や三重大学と長きにわたり連携。東京大学とはコンデンサー向けの共同研究として2件(AIによる寿命予測モデルなど)のテーマで進めている。1000件以上のデータを活用し、AIの活用で効率的に研究を進めることができた。三重大学とは電解液の材料開発で基礎的な研究を進めている。
これらの早期開発への取り組みが、排出する二酸化炭素量を減らす取り組みにもつながっているという。「顧客はコンデンサーの材料調達から顧客のところで使用するまでに二酸化炭素をどれぐらい排出しているか興味を持っている。このような分野にも開発を切り込み、今後の開発計画にも取り入れる必要がある」(同社執行役員コンデンサ事業本部技術センターの石田雅彦センター長)。
今後も伸びる市場である自動車市場や情報通機器市場に競争力、サービス、製品を強化し、研究開発を進める方針だ。