2025.07.11 【電子部品技術総合特集】日本ケミコン 野上勝憲常務執行役員CTO

野上 常務

コンセプト主導で開発

コンデンサー、AIサーバー用を強化

 日本ケミコンは、技術方針に「コンセプト主導型の商品開発」を掲げる。野上勝憲常務執行役員CTOは「変化する市場や環境に対応するため、潜在的な顧客ニーズの探索力、技術瞬発力の強化で臨み、高収益商品を創出する。そして、商品を通した社会貢献の意識を持つことに努めている。これを実現するために、『コンセプト主導型の商品開発』に取り組む」と説明する。

 分野別では、特に強化しているのがAI(人工知能)サーバー用コンデンサーの開発。「この1、2年、AIサーバーの立ち上がりのスピードが速く、加速しているため、瞬発力を上げて対応している。今後1年から2年後くらいまでの市場要求に応える商品は固めることができたが、その先に向けた開発に取り組む」(野上CTO)。

 アルミ電解コンデンサーは、スナップインタイプコンデンサーでL寸法(長さ70ミリメートル以上)の高容量品の市場への参入を目指している。

 このほか、サーバー用の導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサー(ハイブリッドコンデンサー)や積層セラミックコンデンサー(MLCC)なども含め、開発を強化する。

 「当社ほどAIサーバー市場に貢献できるポジションにいる企業は少ないと考えており、チャンスであるとみている」(野上CTO)。

 同社は、AIサーバー向け製品の開発強化の一環として、今年4月から「材料開発部」を技術本部内に取り込み、材料開発、製品開発、生産設備開発まで、同社の独自技術でスピーディーに一気通貫で対応できる体制を構築した。

 「これにより、顧客の高容量化ニーズに応えていく」(野上CTO)。

 車載製品開発にも引き続き力を注ぐ。EV(電気自動車)の大容量・大電流化への対応や自動運転に適したコンデンサー開発、バックアップ用キャパシターなどの開発に力を入れていく。

 「今後もEV化の進展は必然であるため、地道に取り組む。現在AIサーバー向けで進めている技術開発は、車載にも応用できると考えている」(野上CTO)。

 産学共同研究では、21年から、文部科学省「革新的パワーエレクトロニクス創出基盤技術研究開発事業」の「高性能・次世代高電力密度パワーエレ機器に向けた高性能コンデンサの研究開発」に参画し、同社がハブとなりコンデンサー材料研究に取り組んでいる。

 研究開発業務でのAI活用も進めており、研究開発の効率化や取得データのデータベースの有効活用などに使用している。