2025.08.08 【コネクター特集】主要コネクターメーカーにアンケート 電波新聞社まとめ
コネクターメーカー各社は、2025年度もグローバルで積極的に事業を展開する。25年度のコネクター市場は、米トランプ関税をはじめとする外部要因の変化で不透明さも強まっているが、そうした中で各社は自動車、産業機器、サーバー/データセンターなど、高付加価値分野での事業拡大を目指す。BCP(事業継続計画)や地産地消ニーズを踏まえた社内体制の拡充や、グローバルサプライチェーンの強靭化(きょうじんか)への取り組みも進む見通しだ。アンケートは7月に主要コネクターメーカーを対象に実施し、8月5日までに回答のあった15社について集計した。
国内・世界需要とも「10%未満の増」
2025年のコネクター需要予測

2025年の「国内」および「全世界」のコネクター需要予測を聞いた。
「国内需要」では、回答11社中、最も多かったのは「10%未満の増」とした7社。次いで多かったのが「前年並み」の4社で、「減」とした企業はみられなかった。
「グローバル需要」については、回答11社で最も多かったのは「10%未満の増」とした8社で、全体の7割強に達した。
「2桁以上の増」を予測した企業はなかった。
コネクターのグローバル需要は、21年と22年は成長したが、23年は産機・民生市場の在庫調整などにより大幅に需要が減少。
24年は需要が反転した。25年は米トランプ関税などの問題もあり、市場はやや不透明ながら、回復基調の継続を予測している企業が多い。
25年度計画、「10%未満の増」最多
コネクター部門の売上高実績・計画


各社のコネクター部門の売上高の24年度実績と25年度計画を聞いた。
24年度実績は、回答13社中、最も多かったのは「10%未満の増」と答えた5社。「前年並み」が3社で続いた。一方、「20%以上の減」とした企業も2社あった。
24年度は産業機器市場の調整局面が続いたため、産機向け売上比率の高いコネクターメーカーには厳しい年となった。
25年度計画では、回答13社のうち、最も多かったのは「10%未満の増」とした9社。「前年並み」が3社だった一方、「10%以上の増」とした企業はなかった。1月の調査時には「10%以上の増」とした企業が2社あったことから、その後のトランプ関税などの問題も影響しているとみられる。
自動車電装品、産機、サーバー関連
2025年のコネクター部門の拡販重点製品分野

25年の拡販重点製品分野(国内+海外市場、複数回答)について尋ねた。
回答15社で、最も多かったのは「自動車電装品」の51ポイント。次が「産業機器(含むFA)」の37ポイントだった。3位以下は「サーバー/データセンター関連」「通信・放送インフラ関連」「環境・新エネルギー関連」「ウエアラブル端末」の順となっている。
自動車市場は、多くのコネクターメーカーが事業拡大のための最重要分野と位置付けている。CASEやSDVをメガトレンドとした自動車の技術進化は、車1台当たりのコネクター搭載点数や付加価値を今後も向上させる。産業機器は、社会全体の自動化ニーズやスマート化ニーズの高まりで、今後ますます重要性が増す。
サーバー/データセンター市場は、生成AIの急速な広がりによって今後も高い成長が続く見通しで、同市場を重点分野に位置付けるコネクターメーカーが増えている。
このほか、携帯電話/スマートフォン、医療機器/ヘルスケア、航空宇宙、防衛関連、タブレット端末など、さまざまなアプリケーションが拡販重点分野として挙げられた(集計方法=上位5分野を挙げてもらい、1位=5ポイント~5位=1ポイントとして集計)。
営業体制拡充国は中国・インド
海外営業体制拡充

「今後営業体制を拡充する国や地域」の質問(複数回答)では、回答13社で、最も多かったのは「中国」の41ポイント。2位は「インド」の31ポイント。1月の調査ではトップだった「米国」は28ポイントで3位となった。以下は「ドイツ」「台湾」「タイ」と続いた。
最近の業界では、米中摩擦が一段と激化し、米トランプ政権の打ち出す政策次第ではグローバルサプライチェーンの米中デカップリングが一層進むことなども懸念されているが、そうした中でもコネクターメーカー各社の中国市場重視の姿勢に変化はない。加えて、将来の成長ポテンシャルが高いインドに対する注目度も一層高まっている。
「ある程度影響を受ける」が8社
米国関税政策の影響や対応について



米国第2次トランプ政権の追加関税政策や貿易規制などによる事業への影響や対応策などを聞いた。
「米国の追加関税や貿易規制が事業に与える影響についての考え方」に関する質問では、回答14社で、最も多かったのは「ある程度影響を受ける」と答えた8社だった。次いで多かったのが「影響を受けるが限定的」と答えた5社で、現時点で「大きな影響を受ける」と回答した企業はなかった。
「具体的にどのような影響が出ると考えているか」の質問(複数回答)では、最も多かったのは「グローバルでの完成品や完成車需要が低下することによる間接的なマイナス影響」と答えた10社。「米国向け輸出製品に関する直接的なマイナス影響」を挙げたのは6社だった。
このほか、「貿易規制などにより自社の部材調達に影響が出る」「サプライチェーンの混乱などがコスト増につながる」がそれぞれ3社となった。
コネクターメーカー各社の売上高に占める直接米国輸出比率は総じて低く、1桁台の企業が大半だとみられるが、影響はゼロではないため、相互関税の行方は各社にとって大きな関心事となっている。また、追加関税がグローバルでの機器需要に与える間接的影響は、現状では度合いが不透明であるため、今後の先行きが懸念されている。
「米国の追加関税や貿易規制の対応策」(複数回答)についての質問には、14社が回答し、最も多かったのは「情報収集活動強化」の11社だった。次が「生産体制の見直しを行う」で5社。「物流体制の見直し」が4社となった。「特に対応は考えていない」とした企業も3社みられた。
日本に対する米国の相互関税はいったん15%で決着し、4月に米トランプ大統領が提示した数値からは引き下げられたものの、今後、見直しが入る可能性もあり、まだまだ不透明となっている。
また、日系コネクターメーカーがASEANなどの工場で生産した製品を米国に輸出するケースもあるため、各社は、米国政権と他国間の相互関税交渉についても注意深くみていく必要がある。
米トランプ関税の影響により、自動車業界などでは顧客の生産地変更やサプライチェーンの変更などが今後増える可能性もあることから、情報収集活動の徹底が、より重要性を増している。
なお、アンケートの回答企業によっては、日本からの輸入品に対する「米国相互関税」が15%になったことが明らかになった7月22日以前に回答済みだった企業もある。
アンケート回答企業一覧
▽イリソ電子工業▽SMK▽オータックス▽京セラ▽ケル▽小峰無線電機▽七星科学研究所▽日本航空電子工業▽日本端子▽ハーティング▽ヒロセ電機▽ホシデン▽ミネベアミツミ▽山一電機▽ヨコオ。(15社/五十音順)