2025.08.26 【エレクトロニクスに貢献する化学材料特集】トクヤマ 半導体市場好調で放熱材料などに力
トクヤマの成長事業である電子先端材料はシリコン、ICケミカル、シリカ、放熱材の4分野で構成する。
放熱材事業は、高熱伝導性と絶縁性を両立し、熱膨張係数がシリコンに近く、ハロゲン系プラズマガスへの耐食性が高いユニークな特徴を持つ窒化アルミニウム(AlN)粉末が主力。独自の還元窒化法による製造プロセスが「品質要求の高い半導体製造装置や基板分野で高評価を得ている」(及川博司放熱材営業部長)とし、AlN粉末生産量と市場シェアで世界トップの大きな要因と説明する。
同社は1980年代に世界初の透光性AlNセラミックス開発と還元窒化法によるAlN粉末量産化に成功。用途開拓でセラミックス基板、薄膜メタライズ基板などを製品化した。半導体市場の拡大で15年ごろからAlN粉末需要が急伸し、粉末の生産能力は「過去10年で2倍以上」(及川部長)だ。今日では半導体製造の成膜やエッチング装置用セラミックス部品原料に粉末を広く使う。
拡大を期待する用途は半導体後工程や実装工程で各種樹脂材料の放熱性を高める粉末、フィラーで、HBMやチップレットなどは事業機会だ。粒径1マイクロ~数十マイクロメートルをそろえ、樹脂とのなじみ向上や充塡(じゅうてん)性を高める表面処理グレードもラインアップ。
開発・事業化を進める窒化ホウ素(BN)も有望で、平板な粒子を複数凝集させて広い方向で熱伝導率を高める技術を蓄積し、顧客の配合技術に応じた選択肢を展開する。「半導体の性能向上や技術革新に伴う放熱ニーズの高まりで新規引き合いも依然多い」(及川部長)。フィラーは広く網を張る営業体制を築く。
5月にインドで現地法人を設立。同国半導体産業が発展・成長すれば「放熱材にも商機はある」と及川部長。
25年度の放熱材分野は前年度を上回る見通しだ。特徴ある材料で米関税政策も事業の流れが変わるほどの影響はないとし、及川部長は、技術や品質の優位に加え「半導体需要増に応える安定供給も重要」と述べた。