2025.10.21 日本ゼオン、スマート工場化に向けIoT共通基盤を構築 製造現場のデータ活用を支えるIoT共通基盤を構築し運用を開始
IoT共通基盤の概念図
日本ゼオンは、全社横断でのスマート工場化推進に向け、新たにIoT共通基盤を構築し運用開始した。同基盤を通じて、製造拠点や研究施設で蓄積される多様なデータの見える化と有効活用を進め、現場業務の効率向上とデジタル技術のさらなる展開を図る。
同社は、製品の品質を確保しながら生産を最適化・効率化するため、2020年からデジタル技術を活用したスマート工場化に取り組んでいる。一方で、同社の最大の使命は安定操業であるため、プラント制御システムや周辺の測定・監視システムなど生産に関わるシステムはほかの社内ネットワークとは切り離して独立性を保ち、外部からの不正アクセスを遮断する運用で安全性を高めている。
この運用は安全性が担保される代わりに、全社横断での操業データ利活用が進めにくい側面もあり、スマート工場化を進める上での課題となっていた。
同社は、この課題を解決し、各現場で蓄積されてきた操業データを安全な方法で全社的に活用していくため、操業の周辺システムを対象としたIoT共通基盤の構築に着手し、現場のアイデアを迅速に具現化できる体制を整備した。
今回の取り組みでは、独立した測定機器などのデバイスから、セルラー通信の閉域ネットワークを経由してクラウド上の共通システムや工場・研究所システムに接続することで、高いセキュリティーを保ちながら柔軟かつ迅速なIoTシステムの導入を実現している。
セルラー網のメリットとして、原則、有線LANの敷設工事が不要なことがあり、センサーや分析装置などを簡便に接続できる構成により、現場主導での設置とスピーディーな導入を可能とした。任意の場所にゲートウエイを設置するだけで、社内からはアクセス可能でありながら外部からはアクセスできない通信環境を実現した。
基盤構築では、IoTプラットフォームを提供するソラコムの支援を受けながら、通信・クラウド技術と専門的なコンサルティングを活用してシステム設計を進めている。
同社は同基盤導入に先立ち、高岡工場(富山県高岡市)で「設備の動作監視システム」を構築し、PoCを経て今年5月から本番運用を開始している。これまで工場敷地内での移動を要していた巡回点検業務を大幅に減らすことができ、作業負荷が軽減されたほか、リアルタイムデータの収集により、早期の異常発見や予兆検知などの分析が可能になったという。
現在は、複数の拠点で同基盤を活用したIoTプロジェクトのPoCが進行中で、高い効果が得られた取り組みは全国の製造拠点に順次展開していく計画だ。








