2022.08.30 【ソリューションプロバイダー特集】 22年後半 デジタル軸に成長情報サービス関連市場

オフィス環境を見直し、多様な働き方を支援する動きも活発化

クラウドなど活用のDX投資活発

 情報サービス関連市場は、2022年後半も堅調に推移しそうだ。コロナ禍も3年目に入り、多くの企業が市場環境に左右されずに成長していく地盤づくりを始めている。その鍵となるのが、クラウドやIoT、人工知能(AI)といった最新のデジタル技術を使ったデジタルトランスフォーメーション(DX)で、この分野への投資は旺盛だ。デジタル技術を使った業務改革の支援を生業にしている情報サービス産業への引き合いも多い。電波新聞社が行った情報サービス関連各社トップインタビューでも、後半戦に向けてデジタルを軸に成長が期待できるとの見解が多くを占めた。

 22年後半は、引き続きDXを中心にしたサービスの導入が進むとみられる。情報サービス各社は、デジタル技術を使い、企業の業務環境の改善や成長を支援していくことを主軸にサービスメニューを増やしていく。

 特にこれからはデジタル技術を使いトランスフォーメーション(変革)していくところまで支援することが重要で、情報サービス主要各社トップも「DXのデジタルはツールに過ぎず、どのように変革していくかが課題になる」と口をそろえる。これからはデジタルの導入にとどまらず、いかにデジタルで企業の環境を変革し具体的な成果につなげるかまで見ていくことがポイントになってくる。

 この一年では永続的に企業の成長を支援していくことを命題にする情報サービス企業が出始めており、「サステナビリティー(持続可能性)」をキーワードに掲げるところも増えてきた。コロナ禍で企業を取り巻く環境が大きく変わってきていることもあり、自社の成長と顧客の成長の両面で見ていく動きも顕著になっている。

 後半戦に向けては、事業面ではDXが、企業経営の視点からはサステナビリティーの切り口で業界は動いていきそうだ。

各社、企業の業務改善や成長支援

 各社は後半戦に向けて、引き続きDX支援を前面に出したサービス展開を加速させる。企業を取り巻く環境が変化する中では「働き方改革」をキーワードにした新しいオフィス環境の構築支援をしていくほか、企業と顧客との関係をより良くしていくCX(カスタマーエクスペリエンス、顧客体験価値)向上なども課題になってきている。製造業では現場のデジタル化が喫緊の課題になっており、この分野の投資は継続して伸びていく。

 現場のデジタル化を支援する動きでは、東芝デジタルソリューションズがAIなどを活用し現場改革を支援する仕組みを提供しているほか、NECネクサソリューションズは製造業の品質調整にAIを活用し、支援する仕組みを提案し始めている。日立システムズは企業の現場が抱えている課題に速やかに対応し、最適なソリューションを提供する体制を整え支援を始めた。

 NECネッツエスアイはローカル5Gの導入と現場のデジタル化を両面で支援しているほか、NECプラットフォームズは国内外の工場のスマート化を進め、ワンファクトリーとしての運用をさらに高度化。自社の持つ技術を生かしたソリューション展開も加速させようとしている。三菱電機インフォメーションシステムズも製造業のデジタル化への対応に追われる。SAPの基幹系システム更新が迫っておりSAP関連の案件も各社好調だ。

 ヘルスケア業界の現場のデジタル化も進む。NECソリューションイノベータはデジタルヘルスケアサービスを本格展開し、未病や行動変容につなげられる支援を始めている。三菱電機ITソリューションズはヘルスケアとライフサポート分野向けの支援を強化し、保険薬局向けサービスを始める。NECフィールディングは医療機器の保守サポートを強化するとともに院内向けコミュニケーションツールの切り替え支援も進めている。

働き方改革が次の段階に

 働き方改革も次の段階に入り始めた。これまではテレワーク環境の構築が中心だったがこれからはデジタル技術を活用し、いかに生産性を高めていくかにかじを切り始めた。クラウドサービスの導入だけでなくオフィス環境の再構築なども始まりつつある。特にテレワークと出社を併用していく動きが活発で、これまでと違ったオフィス環境の構築も求められてきている。

 オフィス環境の見直しを推進している内田洋行は在宅とテレワークを併用したハイブリッドワークを実現する支援を本格化。働く場所を意識せずに生産性を上げられる仕組みを開発し提供する。

 大塚商会はオフィスに関する課題を全方位で支援できるオフィス丸ごと提案を継続。企業のデジタル化とともに、安全にクラウドサービスを利用できる環境づくりも進めている。

 企業ごとに異なる課題を最適なデジタルサービスで支援するリコージャパンは業種別のデジタル化支援を加速。日本事務器は企業自身がDXを活用し、定着できるよう支援をしている。

 日立ソリューションズ・クリエイトはマイクロソフトのチームズをそのまま活用できる仮想オフィスの外販を始めた。実際のオフィスでの業務と仮想オフィスとを組み合わせた提案を進めていく計画だ。

顧客接点に変化

 コロナ禍で企業と顧客との付き合い方も変わってきている。顧客との接点を見直す動きも出てきており、非対面での接客なども増えてきた。生体認証の活用のほか、Web窓口なども増えている。アイティフォーは金融向けに非対面のWeb受付システムを発売し、販売が好調に推移している。新たな顧客接点を構築するための支援はこの先もさらに増えそうだ。

 さらに、ここ数年で顧客との関係性を見直し密にしていくCXが注目されてきた。多くの企業がCXを掲げるようになり、顧客との関係構築を模索する。コンタクトセンターサービスを手掛ける富士通コミュニケーションサービスはいち早くCXを掲げた支援を始めた。CXを高めるためのツール群なども用意して、速やかな支援を進めている。

サステナビリティー

 サステナビリティーをキーワードにする企業も増えてきた。日立ソリューションズは「サステナビリティートランスフォーメーション(SX)」を掲げ、従業員への意識付けなどを本格化。働き方改革やデジタル人財の確保も加速させている。日立システムズもサステナビリティー経営を前面に出す。

 DXファーストを掲げているNSWはデジタルの導入だけでなく変革していくことに注力し、顧客とともに〝共創〟することを重点施策にするとともに、顧客のデジタル化とサステナビリティーの支援を打ち出した。

 サステナビリティーは、各社が取り組むべき命題にもなってきている。この先もサステナビリティーを前面に社内の意識改革を進める企業も増えそうだ。