2023.10.06 【高専生のための半導体特集】半導体製造装置業界の魅力や展望 日本半導体製造装置協会 渡部潔専務理事

高い将来性や地元密着などが特徴

 2022年の主要輸出品目の中で半導体製造装置の輸出額は、自動車や鉄鋼、半導体等電子部品に次ぎ4位と日本の重要な輸出品の地位を占める。日本半導体製造装置協会(SEAJ)の渡部潔専務理事に半導体製造装置業界の魅力や展望を聞いた。

 -半導体製造装置業界の現況は。

 渡部専務理事 約11兆円の世界市場のうち約3割が日本。日本製半導体製造装置は約9割が海外向けに輸出している。成長を続ける世界の半導体市場を日本製装置が支えており、国際競争力のある業界だ。

 昨年10月に米国が中国向け半導体製造装置の輸出規制を強化。その結果、中国の先端半導体への投資は止まったが、(先端品ではない)自動車や産業機器などへの投資は継続している。日本の装置メーカーにとって中国は最大の顧客であり続けている。

 -日本製装置の強さの要因は。

研究開発重視が強さ

 渡部専務理事 半導体製造装置業界は売上高の10%程度を研究開発費に当てるなど、「研究開発重視の産業」といえる。ほかの製造業では平均で5%ほど。そこで開発された技術力が競争力を生んでいる。(1990年代以後、日本の半導体メーカーが競争力を失う中)装置業界が世界の半導体メーカーとしっかりと付き合いを続けてきたことも大きい。

 -日本の装置メーカーが特に強いプロセスは。

 渡部専務理事 薄膜を形成する「CVD」(化学的気相成長法)や微細な回路を形成する「エッチング」などの装置は高い競争力がある。ウエハーから不純物やちりを取り除く「洗浄」の装置も工程数の増加につれ導入台数が増えている。ウエハーに回路を描く「露光」も日本メーカーを含む数社しか持たない高度な技術だ。

 検査装置も含めてプロセス全般で日本の半導体製造装置は強いといえる。

 -SEAJの役割とは。

 渡部専務理事 業界が成長する手伝いをすることだ。産業の魅力を伝え、若い人材に入ってきてもらうための取り組みも大事な仕事だ。電子情報技術産業協会(JEITA)の高専生向けイベントにも協力している。

 協会内の「人財開発専門委員会」は、子どもたちにさまざまな仕事を知ってもらう経済産業省のイベント「こどもデー」に参加。部品を組み立てるゲームを体験してもらうなどして業界に関心を持ってもらうために取り組んでいる。

 高専生への出前授業も実施し、業界について講義をして単位も付与している。

 -今後の業界展望は。

 渡部専務理事 半導体製造装置業界は技術の限界に挑戦を続けてきた。今後、製造装置に対しては処理能力(スループット)の向上など生産性に関する要求とともに、環境への配慮が求められる。スマートフォンメーカーなど半導体を使う側からは厳しい要求が寄せられている。製造時の消費電力をできるだけ削減するとともに、半導体自体の消費電力を減らす設計が求められている。装置メーカーとしてもこれらの課題に応えていくことが重要だ。

 -業界に関心のある高専生に業界の魅力とメッセージをお願いします。

 渡部専務理事 半導体製造装置業界は裾野が広く、いろいろな人が活躍できる。高専生の中には物理や化学だけでなく、大学レベルの研究をやっている人もいるが、そうした人も活躍できる業界だ。「地元密着」も特徴。会員企業は全国に拠点があり、地元企業を選択することも可能だ。輸出がほとんどの業界のため、国内だけでなく海外でも力を発揮できる。

 何より半導体業界は2030年に市場規模100兆円と高い成長が見込まれている巨大産業。その実現は半導体製造装置業界が支えることになり将来性は高い。最近、一般学生でも半導体への関心が高まってきており、この機運は大事にしたい。業界としても、若い時から鍛えられている高専生の皆さんには即戦力として大変期待している。