2020.03.23 【SMT/SMD特集】SMT/SMD、極小チップ化や高機能化進む

5Gと車載の両輪で需要が伸びるLCR(上から、導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ、チップ抵抗器、チップインダクタ)5Gと車載の両輪で需要が伸びるLCR(上から、導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ、チップ抵抗器、チップインダクタ)

車載向け、新製品の開発加速 5G対応品の需要拡大

 SMT(表面実装技術)が高度化する中で、SMD(チップ部品)の小型化が進んでいる。自動車向けの高信頼性チップの形状が多様化しながら高機能に向けた新製品開発が加速。一方では次世代高速通信規格5Gの本格運用によって、スマートフォンに搭載されるSMDは極小チップへの動きを強める。

コンデンサ 

 積層セラミックコンデンサ(MLCC)は、車載向けに低損失、3端子、共振用、高耐熱、高電圧、大容量化に向けての開発が進展。一方では5G向けに超小型で大容量化に向けた動きが活発化している。0402サイズや0603サイズといった超小型品の市場規模が拡大する見通し。最小サイズの0201サイズでは0.1μFまで大容量化が進展。基板内蔵用では厚み0.064ミリメートルまで極薄化している。

 アルミ電解コンデンサは、電解質に電解液を使用した一般的な製品に加え、導電性高分子(ポリマー)を使った導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ(ポリマーコンデンサ)、さらには電解液とポリマーを使った導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ(ハイブリッドコンデンサ)のラインアップが充実している。

 こうしたポリマー系は、車載、5G基地局向けの需要に対応する。特にハイブリッドコンデンサは、導電性高分子による低ESR特性と優れた耐熱性に加え、電解液による酸化皮膜修復性を併せ持ち、低ESR、高信頼性の高耐電圧を実現する。

 既存製チップタイプで80V程度まで高耐圧化を実現。しかも135度対応の高温度信頼性を確保。これによりECUなどでの採用が本格化してきた。

 自動車向けでは、150度対応製品が販売されるようになった。

 タンタルコンデンサは、タンタル粉末を誘電体として陰極の二酸化マンガン、あるいは導電性高分子を使ったもの。タンタル粉末のCV積は12年に20万CVだったのが、16年では30万CVへと大きくなり、これに伴い容量が飛躍的に拡大している。小型化では、構造を一般的なモールド構造から下面電極構造にすることで、薄型化。現在では厚み1ミリメートル内外まで薄型化技術が進展している。最近では車載グレードの製品が市場に投入され、自動車での搭載が表面化してきた。

抵抗器 

 抵抗器もコンデンサと同様に、自動車分野での自動運転を視野に入れた安全系の機能拡充、xEV化といった環境対応などによって電装化率がさらに上昇し、搭載点数の増加が需要を押し上げると見込まれている。さらに5G用スマホ、IoT、AIなどとの融合による多方面への波及効果が新たな市場を形成することに期待。

 5G用スマホ向けは、0603サイズ、0402サイズの需要が伸びる見通しだ。

 さらにモジュールでは部品内蔵基板で小型化する動きも見られる。部品内蔵基板の電気的接続には従来のはんだ接続に加えてレーザービアを形成することで、直接銅箔パターンとの接続を行う銅めっき接続方式が採用されている。はんだ接続方式の場合には既存の0402サイズや0603サイズなど、一般的な小型チップ抵抗器が使用されることが多いが、銅めっき接続方式の場合は銅めっき電極を形成した専用部品が必要になる。現在、厚みが0.13ミリメートルまで極薄化している。

 今後、IoTを取り巻く各種端末、モジュールの小型化がさらに進展する。次世代チップとして0201サイズの提案が始まった。

 車載用抵抗器は、相次ぐ新機能の採用でECUの搭載点数が増加し、多くの用途で様々な抵抗器を使用するようになった。ミリ波レーダー、カメラをはじめADAS関連では、それぞれの制御回路を小型モジュール化する動きが見られる。チップ抵抗器は0603サイズ、0402サイズといった極小チップの採用が始まっている。

 電源周辺部の回路向けに硫化発生による抵抗値断線を防ぐために硫化に強い耐硫化チップ抵抗器が使用される。硫化ガス濃度が高い環境下で使用された場合に、内部電極の硫化による断線という現象に対応する。

 自動車用エンジンの制御回路のほか、各種ECUなどでは耐サージチップ抵抗器を搭載している。

 電動パワーステアリングや電動ブレーキなど、様々な回路で利用されているモーターへの負担が大きくなっている。また、アクチュエータやバッテリ回路も多く、電圧・電流を制御するための電流検出用抵抗器が用いられる。金属板抵抗体が製品ボディーを兼ねるパワー低抵抗チップ抵抗器の大電流、ハイパワー、低抵抗化技術が進展している。

インダクタ 

 インダクタは、自動車、5G用スマホ向けを中心に需要増に期待がかかる。高周波用、電源用、フィルタ用などの用途に最適な小型、薄型品が相次いで開発されている。

 高周波用インダクタは、RF回路における高性能化のための高Q化、高精度化と高密度実装化への対応のため、小型、薄型化を両立させることが要求されている。現在では、0402サイズにおける高Q化技術が進している。

 電源用のパワーインダクタは、フェライト巻線型、フェライト積層型のほか、ここ数年、メタル系パワーインダクタでの巻線、積層、さらには薄膜の3種があり、サイズは1608サイズまで小型化。しかも厚みは1㍉以下に抑えられ、電源回路の薄型設計を可能にしている。メタル積層チップパワーインダクタでは、これまで最小だった1608サイズをさらに小型化し、1005サイズが世界最小となった。

 フィルタ用インダクタは、ノイズ対策向けとしてチップビーズが多用されている。スマホにおけるノイズ対策は、高密度実装化の進展によって、0402サイズへと小型化シフトしてきた。

 車載用インダクタは、電装化率の高まりから搭載点数が増加している。同インダクタに求められるのは、基本的には自動車の信頼性試験であるAEC-Q200を満足した製品。ECU用インダクタは、125度対応から150度対応へと高温度保証が要求されるようになってきた。