2020.04.22 【ルームエアコン特集】寒冷地向けの需要が拡大 IoT活用の利便性追求も加速
国内のエアコン市場で、買い替えを中心とする需要の底上げが進んでいる。
日本冷凍空調工業会(JRAIA)がまとめた19年度の国内出荷実績は、過去最高の出荷となった前年度には及ばなかったものの、957万台を超える高水準。過去2番目の記録で、エアコン需要の底堅さを印象付けた。
エアコン市場は、13年度に統計上初めて900万台を突破した。これは、14年4月に8%へと消費税が増税されたことによる駆け込み需要の影響が大きい。
以降、14-16年度は800万台の水準で推移したが、徐々に出荷台数は拡大し、17年度に再び900万台を超えた。
特に需要の停滞が懸念された14年度は、駆け込み需要の反動を折り込んで、JRAIAは当初、年間780万台の出荷規模を予想していた。
しかし、ふたを開けてみると800万台を超える着地となり、業界の予想を超えるスピードで需要の裾野が広がっていることを裏付けた。
需要を支えているのは、北海道や東北といった寒冷地でのエアコン需要の拡大だ。メーカー各社は、標準地向けよりも温度の低い環境でも十分な暖房能力を発揮できる製品を多数開発。
同時に、寒冷地に向けたテレビCMなどでエアコン利用をPRしたことで、徐々に導入が進んできた。
当初は高級機しかなかったラインアップも選択肢が増え、寒冷地向けエアコンは、現在では寒冷地に限らず、標準地の家電量販店でも店頭展示されるようになった。
リビング中心だったエアコン利用が、寝室や子ども部屋といった個室でも利用されるようになってきたのも、需要の底上げにつながっている。
リビングと異なり、個室はエアコンの設置スペースが狭いケースが少なくない。そのため、メーカーも本体の高さや横幅を抑えた製品を開発。
カーテンレールの上や窓脇の限られたスペースなどに設置できる機種の開発を強化してきた。
こうした製品のバリエーションが増えたことに加え、導入しやすい価格帯になってきたこともあって、1世帯当たりのエアコン保有台数は増える傾向にある。
一方で、高機能化も進展している。快適性や清潔性の追求はエアコン開発の基本路線だが、最近ではIoT技術を生かした利便性の追求が急速に進んでいる。
これまでもスマートフォンからの遠隔操作は提案されてきたが、別売りの無線アダプタの導入が必要であったのが足かせとなり、普及は一向に進んでこなかった。
無線モジュールを搭載する他機器が普及するようになって、エアコンでも標準搭載する製品が増えた。
同時に、スマホからの遠隔操作だけでなく、スマートスピーカとの連携や、クラウド環境との接続による気象データとの連携運転、赤外線センサーを使った熱画像による室内見守りなど、様々な付加サービスが実現されるようになった。
当初フラグシップ機を中心に始まったIoT対応は現在、その裾野を下位機種にまで広げようとしている。ただ、エアコンに限らず白物家電のIoT化に対する消費者の認知は低い。
POPなどでの訴求は増えているとはいえ、量販店の売り場でもまだ存在感は大きくなく、課題として残っている。
新型コロナウイルスの感染拡大により、外出自粛や店舗休業などで、市場環境は厳しい状況が続いている。本来であれば、高級機を中心に夏前の早めの提案に取り組む時期だが、それもままならない。
季節商材であるエアコンは、暑くなると需要が急激に上がる。今年2月に気象庁が発表した6-8月の予報によると、全国的に平均気温は平年並みか高い予想だ。新型コロナが収束するか不透明な状況だけに、需要期の気候を注視した対応が今年は一層必要になりそうだ。