2020.05.20 【次世代自動車用部品特集】次世代自動車用部品、大変革期こそビジネスチャンス

日産のクロスオーバーコンセプトEV「ARIYA」(東京モーターショー2019から)

将来ニーズを先取り 事業拡大へ活発な技術開発

 電子部品メーカー各社は、次世代の自動車開発に照準を合わせた技術開発を活発化させている。

 現在の自動車市場は「100年に1度」とされる大変革期を迎えており、特に今後は、「CASE」「MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)」などをキーワードにした市場や技術の変革が、カーエレクトロニクス市場をさらに成長させていくことが見込まれる。

 電子部品各社は、自動運転化や電動化などの車の技術変革や業界の構造変革をビジネスチャンスと捉え、将来ニーズを先取りした取り組みを進めることで、車載用電子部品ビジネスの中長期の拡大を目指す。

 自動車市場は、電子部品産業の中長期の成長をけん引する最重要分野の一つ。車の世界生産台数は乗用車と商用車を合わせ、ここ数年は年間9000万台を超えている。

 20年に関しては、新型コロナウイルス感染症の拡大が自動車マーケットに大きな影響を与え、世界の自動車販売台数は最大2割程度落ち込むことなども想定されているが、ただ、コロナ収束後は再び成長軌道に回帰し、中長期的な安定成長が続くことが予想されている。

 直近では、新型コロナ関連での最近の原油価格急落が電気自動車の普及スピードの妨げになるのでは、との懸念が一部で指摘されたが、EVシフト加速の動きに今後も変化はない、というのが業界のコンセンサスだ。

 CASE(コネクテッド、オートノマス、シェアード&サービス、エレクトリック)は、今後のモビリティ革命をけん引する四つのメガトレンド。これらにより、カーエレクトロニクス技術は大きく変貌し、中長期で市場を大きく押し上げていくことが予測されている。電子部品各社は、これらの変化に対応するための技術戦略やマーケティング戦略に努めている。

 分野別では、「コネクテッド」に関しては、高速伝送対応や通信品質の向上に向けた電子部品・モジュール開発が活発。「オートノマス」では、車載カメラ部品やセンサーなどの開発が活発化している。

 「エレクトリック」では、EVなどの環境対応車向けに、大電流・高耐圧部品の開発や次世代パワー半導体関連部品などの開発が進展。「シェアード&サービス」では、MaaS関連市場に向けた新たなビジネスモデル構築などの動きがみられる。

 自動車の世界生産は、08年秋のリーマンショック後の急減、11年の東日本大震災やタイ洪水に伴う生産停滞の後は、12年から17年にかけて堅調な増加が続いた。

 18年は米中貿易摩擦激化に伴う中国の消費市場減速によって、世界最大の自動車市場である中国での新車販売台数が28年ぶりに前年を下回り、欧州市場もドイツの新排ガス規制「WLTP」導入に伴う新車生産の遅れなどから、18年の秋口以降は軟調に推移した。

 19年は、米中貿易摩擦長期化に起因する中国の景気悪化で、中国での新車販売台数が大きく落ち込み、欧州やインドでも需要が軟調に推移したことから、世界の新車販売拡大にブレーキがかかったが、そうした中でも、車の電子化・電動化に伴うカーエレクトロニクス市場の広がりにより、車載用電子部品市場は、自動車市場そのものに比較すると堅調さを維持している。

 車載用電子部品市場は、車の高機能化やEV/HEV化進展を背景に、車の生産台数の伸びを上回る成長が毎年続いている。

 特に、ADAS/自動運転のキーデバイスであるセンサーや通信系デバイス、撮像系デバイス、EV/PHV向けパワーデバイスなどは、車の技術進化とともに高い成長を遂げている。さらに、20年代半ばごろからは、車載5G(次世代高速通信規格)関連需要も本格的に立ち上がる見通し。

 20年の世界の自動車マーケットは、新型コロナ問題による景気低迷や移動制限などにより、特に年度前半は厳しさが続くことが予想されているが、コロナ収束に伴い、年度後半以降、緩やかな回復が期待されている。

 一方、欧米やASEANなどで企業への活動制限が続く中でも、自動車業界各社の開発業務は継続的に進められており、各社はコロナ後を見据えた事業活動を一段と加速させる。

電子部品各社、生産・供給、技術サポート強化

 電子部品メーカー各社は、自動車業界の地産地消要求の強まりに対応するため、生産・供給体制や技術サポート体制の強化に力を注いでいる。

 各社は、日米欧をはじめとする主要自動車メーカーやTier1に対し、顧客の近くでの供給や技術サポートのための体制構築を進めることで、顧客満足度の向上や事業のスピードアップを目指す。

 特に最近は、米中貿易摩擦に伴う不透明さが増していることや、新型コロナ関連で一部の地域で工場の操業制限なども実施されたことで、これまで以上に最適なサプライチェーン構築や、生産拠点のグローバルでの複線化などが重要性を増している。

企業間の連携加速

 また、国内外の主要自動車メーカー同士や、有力IT企業なども含めた企業間連携の動きも一段と加速しているため、電子部品各社も、これらの動きを注視している。同時に、車載用部品ビジネス強化を目的とした、日系電子部品メーカーによるM&Aの取り組みも活発化が継続している。