2020.05.20 【次世代自動車用部品特集】自動運転車の開発動向
トヨタ自動車のePalette(CES2020から)
完全自動運転を見据えレベル3以上の実用化加速
自動運転車/完全自動運転車の実現に向けた技術開発が国内外で活発化している。
海外では自動運転レベル3に対応した市販車の発表が一部で始まり、20年からのレベル3実用化が志向されている日本でも自動運転関連の実証実験の動きが活発化している。
自動車産業の技術革新に合わせ、本格的な自動運転の実現に向けた各国での法整備も徐々に進みつつある。
自動運転技術は、今後のモビリティ革命をけん引する代表的なメガトレンドの一つ。
日米欧などの主要な自動車メーカーは、20-21年ごろを実用化ターゲット時期とした自動運転車(自動運転レベル3以上)の開発を加速させるとともに、将来の完全自動運転を見据えた研究開発にも注力している。
完全自動運転に必須とされる次世代高速通信規格5Gの自動車分野での活用も25年ごろから本格化する見通しで、車載5G向けのデバイスやモジュール開発も活発化している。
自動運転車のレベルは、自動走行システムの性能により、レベル1からレベル5までの5段階に分類される。自動車各社が研究開発のターゲットとするのは「加速(アクセル)」「操舵〈そうだ〉(ハンドル)」「制動(ブレーキ)」の全ての操作を車両側システムが行う「レベル3」以上の車両。
レベル1/2は「システムがドライバーの運転支援を行う」位置付けであるのに対し、レベル3以上の車は「システムが運転の主体を担う車両」として明確に区分される。
レベル3では通常時は全操作を車側が行い、緊急時のみ人が操作する。このため、完全自動操舵システムや高精度な物体認識技術、V2X通信、3次元地図データなど様々な技術の融合が必要。道路インフラ整備や法整備も必要となる。
自動運転車の開発では、様々な情報を基に車自体が状況を正確に把握して適切な判断を下すため、「AI(人工知能)」や「ディープラーニング(深層学習)」の活用も重要。状況変化に瞬時で対応するため、「エッジコンピューティング技術」も重要な鍵を握る。
国内外の主要自動車メーカーは、20-21年前後を「自動運転車(レベル3)」の実用化目標時期に定め、技術開発にしのぎを削っている。
日本では開催の1年延期が決まったが、「東京五輪」を自動運転技術のショーケースにすべく、「2020年の自動運転実用化」が官民を挙げた目標に掲げられている。
19年12月施行の「改正道路交通法」では、自動運転レベル3システムが保安基準対象装置に追加された。改正法では、レベル3で車両システムが運転する際の事故責任者が車両販売メーカーではなくドライバー側になることなどが規定された。
自動運転の将来的な方向は、高速道路などの限定領域内で運転操作の全てを車が行い、ドライバーは一切操作に関与しない「レベル4=高度運転自動化」が志向され、25年から30年ごろが実用化ターゲットとされる。
最終的には、一般道も含む全ての公道でドライバーが一切運転に関与しない「レベル5=完全自動運転化」が目標となる。
自動運転技術は、ヒューマンエラー排除による交通事故削減や渋滞緩和、ドライバーの負荷軽減に加え、少子高齢化社会での移動支援、過疎地のドライバー不足、物流分野の人手不足など様々な社会課題解決に向け、一段と重要性が高まっていく。人が運転から解放されることに伴う、新たな付加価値も期待される。