2025.04.28 大型液晶テレビ用フィルムを増産、新棟建設へ 年産2割増 日本ゼオン
氷見二上工場の外観
日本ゼオンは、大画面液晶テレビ向け位相差フィルムの生産能力を増強する。富山県氷見市の氷見二上工場に、世界最大級となる3000ミリメートル幅の新ラインを増設し、加速するテレビの大型化ニーズに対応する。2025年12月に着工し、27年夏の量産開始を目指す。
新ラインの稼働により、同社のテレビ用位相差フィルムの年間生産能力は約2割増え、2億6400万平方メートルに拡大する。福井県敦賀市の敦賀工場との2拠点体制を強化し、事業継続計画(BCP)対応も高める考えだ。
日本ゼオンの光学フィルム「ゼオノアフィルム」は、独自のポリマー設計技術で開発した熱可塑性プラスチック「COP(シクロオレフィンポリマー)」を原料に使用。世界初の溶融押出法で生産され、高い光学特性と優れた寸法安定性を持つ。大型テレビやモバイル機器向けディスプレイの視野角補償や反射防止の用途として需要が拡大している。
同社は20年以降、2500ミリメートル幅フィルムの生産体制を敦賀工場で整備してきた。現在、この幅の生産設備は2系列体制を整備しているが、今回、より大型パネルの需要に応えるため、最大130インチの液晶パネルにも対応可能な3000ミリメートル幅のフィルム生産に初めて取り組む。
豊嶋哲也社長は「液晶テレビ市場では、55インチ以上の大型パネルの需要が増加しており、今後もさらに拡大が見込める」と分析。「当社の位相差フィルムは大型パネルに適しているため、今回、3000ミリメートル幅への投資を決定した」と話している。
氷見二上工場には新たな建屋を建設し、年間4500万平方メートルの生産能力を整備する。増設後、2500ミリメートル幅以上のフィルム生産能力は年間1億4500万平方メートルとなる。
日本ゼオンは中期経営計画「STAGE30」で、COP事業を重点領域と位置付ける。透明性が高く、低吸水性・低アウトガス性を特徴とするCOPは、光学、医療、半導体搬送容器など幅広い分野で採用が進む。25年9月には富山県高岡市でリサイクルプラント、28年には山口県周南市で新プラントの稼働がそれぞれ予定されている。