2025.07.11 【電子部品技術総合特集】日本電波工業 上木健一取締役常務執行役員技術本部長
上木 常務
周波数制御デバイス次世代品開発を推進
要素/設計技術開発に注力
日本電波工業は、長期経営戦略「Vision2030」で掲げるNDKグループのビジョン「周波数でデジタル社会の未来を創る」の方針の下、先々を見据えた要素技術開発、製品開発に力を注いでいる。
上木健一取締役常務執行役員技術本部長は、研究開発方針について、「次世代の周波数制御デバイス開発を推進する。そのための要素技術や設計技術の開発に力を入れている」と話す。
分野別では、通信は5G/6Gに照準を合わせた開発を強化。車載は、「ADAS搭載の増加で車内のセンサーやネットワークの数が増えていくため、それを先取りした技術開発を推進する」(上木常務)。
AIデータセンター向けでは、156.25メガヘルツの差動出力SPXO(クロック用水晶発振器)を開発し、昨年9月に量産を開始した。通信速度800ギガbpsに対応する製品。次世代の312メガヘルツのSPXOのサンプル対応も開始し、「2026年の量産化を見込む」(上木常務)。
さらに次々世代の625メガヘルツのSPXO開発にも着手。このほか、AIサーバーや次世代RU(小型基地局)向けに高性能なTCXO(温度補償型水晶発振器)を開発、サンプル展開を始めている。
スマートフォン向けは、次世代スマホ向けに水晶発振器の多出力品開発を進めており、27年モデルでの採用を目指す。また、スマホでの位置精度改善要求に対応するため、熱変化による周波数のズレを抑制するサーミスター内蔵水晶振動子(76.8メガヘルツ)を開発し、26年の採用を目指している。153.6メガヘルツサーミスター内蔵水晶振動子のサンプル展開も進める。
光学部品は、N-Grade EXの超高純度原石を使用した製品を開発し、「半導体露光装置や高出力レーザー向けに引き合いが増えている」(上木常務)。
研究開発の中核となる狭山事業所(埼玉県狭山市)では、人工水晶の育成、加工技術や、水晶振動子・振動発振子の技術開発、超音波関連の開発などを行う。千歳テクニカルセンター(北海道千歳市)は、QCMセンサーの開発や無線システムの受注開発などを担当する。
宇宙用QCMは、JAXAに加え、米国NASA、欧州ESA、独DLRにも採用された。半導体製造装置向けの「Twin-QCM リアルタイムプロセスモニタ」も導入段階に入ってきた。千歳ではこのほか、防衛関連の通信装置開発も強化している。
さらに、開発体制拡充の一環として、24年12月に新たに英国にICの開発センターを開設した。