2025.09.30 STARLightプロジェクト始動 欧州で総事業費178億円

STのレミ・エルワザン氏

動き出した欧州300ミリシリコンフォトニクス研究(イメージ)動き出した欧州300ミリシリコンフォトニクス研究(イメージ)

 欧州の半導体大手、STマイクロエレクトロニクス(ST)が主導する300mmシリコン・フォトニクス(SiPho)技術を研究する「STARLight(スターライト)プロジェクト」がEU(欧州連合)の次世代半導体共同開発プロジェクト「EU CHIPS 共同事業」に採用された。ST主導の共同開発のための「StarLightコンソーシアム」が設立され、11カ国から24企業・研究機関が参加。総事業費は約1億ユーロ(約178億円)、2028年までに量産化にこぎ着けるほか、SiPho量産に向けてのバリューチェーンを確立する。今回の事業費の内訳はEUからの助成金が2548万ユーロ、コンソーシアム加盟企業による負担金が7589万ユーロ。 

 300mmSiPhoはシリコン半導体の製造技術を応用してフォトニクス回路と呼ばれる光回路を300mmシリコンウエハー上に構築する技術。イスラエルのタワー・セミコンダクターズが24年11月に300mmSiPhoプロセスを標準ファウンドリーサービスとして提供開始している。 

 STは今回、データセンター用光モジュールの独SICOYA、光通信技術のアイルランド企業Mbryonics、自動車やロボット用センサーの仏タレス、スウェーデンのエリクソン、米エヌビディア、ベルギーの研究機関imec、パリ・サクレー大学など計24者と協業、28年5月末までコンソーシアムとして研究開発に取り組んでいく。開発されたフォトニクス集積回路(PIC)の主な用途はデータセンター(DC)、AI(人工知能)クラスター、通信機器、自動車、センサー市場など。 

 DC向けでは、28年までの具体的な技術的ゴールとして、STやSICOYA、タレスなどが参加する最大200Gbpsの高速光通信デモンストレーター(実証機)の構築を掲げている。将来的には400Gbpsのデータ転送速度を目指す。 

 通信機器分野も今回のSTARLightプロジェクトにとって大きなテーマ。エリクソンはRAN(無線アクセスネットワーク)向けの光オフロードスイッチや二酸化炭素(CO₂)を削減し、効率を改善するROF(Radio-over-Fiber)技術の開発に取り組む。自動車向けでは、距離や形状をレーザー光でセンシングするLiDARセンサーと自動運転システムのための先進の波形処理を仏Steerlight社が研究する。 

 PICに集積される先進的な材料はSOI(シリコン・オン・インシュレーター)、LNOI(ニオブ酸リチウム)、チタン酸バリウム(BTO)など。

 STのMCU・デジタルIC・RF製品グループのレミ・エルワザン社長は「STARLightプロジェクトは欧州のバリューチェーン全体の構築に向けてとって大きなステップになる。当コンソーシアムは次世代シリコンフォトニクス技術とアプリケーションをけん引する」とコメントしている。