2025.10.24 Orbray、中期経営計画を上方修正へ 秋田県湯沢市で新本社・地域貢献施設の建設着手 

記者会見の様子(中央が並木社長)

 精密部品メーカーのOrbray(東京都足立区)は22日、湯沢工場(秋田県湯沢市)で記者会見し、2026年中の竣工(しゅんこう)に向けて湯沢市成沢で新本社と、地域貢献施設の建設に着手すると発表した。また、業績急伸に伴い、生産体制のさらなる強化や追加設備投資が不可欠となったため、湯沢市に建設予定の新工場の竣工時期を、2028年以降に後倒しする方向で検討を進めるとした。

 同社は2024年7月に中期経営計画を策定し、2029年のIPO(新規株式公開)を目指すとともに、湯沢を核とした事業継続に向けて、新本社に必要な機能の検討を進めてきた。そして、湯沢市議会の2025年9月定例会で土地譲渡が正式に可決されたことを受け、同市成沢で26年3月から新本社と地域貢献施設の建設に着手する。新本社・地域貢献施設は延べ床面積2172㎡で、26年中の竣工を予定。これにより、従来の方針通り、26年末までに本社を湯沢市に移転する。

 並木里也子社長は、新本社・地域貢献施設について、「当社の次なる成長の基盤であるとともに、地域社会との連携を一層深める拠点としての役割を担うものと位置付けている」と説明した。

 新本社は、本社+工場一部機能を担う建物を建設し、技術者や新入社員の教育、同社製品・技術のショールーム、プラスアルファの新機能を持たせる。

 地域貢献施設は、「学び・働き・暮らしを繋ぐ、地域共生施設」をコンセプトに、地域と企業が共に成長できる拠点として、地方創生と過疎化対策への貢献、教育・研修・起業支援・地産地消の推進などに取り組む。教育研修強化の一環として、「Orbray Academy」を開設するほか、女性推進プロジェクトなども推進する。

 同社の業績は、昨年7月の中計発表時の見通しを大きく上回る水準で推移している。2025年の連結売上高は24年7月報告の258億円予想に対し、310億円への上振れを見込む。2029年の連結売上高は24年7月報告の400億円予想に対し、大型案件のさらなる伸長により450億円を超える見通し。「現状では2029年の連結売上高は466億円を予測しているが、さらに上振れる可能性が高い」(同社)。このため、業績の上方修正を含めた中計の再検討を決定したと明らかにした。

 事業別では、フォトニクス事業や精密宝石事業を中心に将来に向けた大型案件が増加しており、「フォトニクスは、「データセンター用2Dファイバーアレイが大きく伸長しているほか、量子コンピューター・半導体向けの光デバイスも増えている。精密宝石は、サファイア基板やパワー半導体用新素材加工などが増加している」(同社)。このほか、ダイヤモンド事業では同社は世界最大の人口ダイヤモンド基板の製造技術を確立済みで、「産業用ダイヤモンド基板でも大きな成長を見込んでいる」とした。

 これらを踏まえ、湯沢市の新工場建設計画では、従来計画から建屋規模を拡大させる方向で再検討し、28年以降の竣工を予定する。さらに、湯沢市および秋田県横手市の既存工場でも能力増強投資などを検討する。

 再検討中の中期経営計画では、グローバル展開の加速、大会社化に伴う体制整備、財務体質の強化、次世代技術の開発、本社機能の強化、従業員の待遇改善、採用の強化、生え抜き社員からの幹部登用、人材支援体制の充実など、多面的な施策を盛り込み、持続可能な運営体制の構築を目指している。

 IPO実施時期については、現状では29年を基本方針とするが、「28年9月への前倒しも視野に検討および準備を進めている」(同社)という。

 同社は2039年に創業100周年を迎える。2040年度の業績目標として、売上高800億円、営業利益100億円を掲げている。並木社長は、「当社は3年後や5年後ではなく、2040年、さらにその先の未来を見据えている。ここ湯沢から、秋田県から新しい価値を生み出し、日本のモノづくりの未来を切り開いていきたい」と語る。