2025.11.19 NTN、微細塗布装置の新技術開発 iPS心筋細胞を実験用プレート上の定位置に適量塗布

開発した微細塗布装置

 NTNは、独自開発した微細塗布装置を用いて、iPS心筋細胞を実験用プレート上の定位置に適量塗布する技術を開発した。生きた細胞や生体材料を積層して、組織や臓器を作製する技術「バイオプリンティング方式」を採用。従来の人手作業による配置を自動化することで、創薬実験の効率化や信頼性の向上を図り、細胞の使用量削減に貢献する。3年後には装置の量産化を目指す。

 微細塗布装置は、針の先端に付着させた数pL(1兆分の1リットル)の液剤を1 回当たり0.1 秒と高速かつ±15µm以下の精度で定位置に適量塗布する装置。同社では自動車部品や半導体などの分野で多数の採用実績があるという。現在、装置のライフサイエンス分野への応用を推進している。

 3月には、大阪大学大学院生命機能研究科との共同研究で同装置を用いて創薬実験に用いる細胞培養プレートを作製する技術を開発し、学術団体の学会で発表。5月には、浜松医科大学で取り組む電子顕微鏡を用いた高感度抗原検査キットの研究開発に同装置が採用されていた。

 今回の新商品は、iPS心筋細胞実験用として以前の機種を改良。細胞濃度や塗布針の位置・形状・表面粗さなど実験結果に影響するパラメーターやアルゴリズムを独自に特定・制御することで、定位置・適量塗布を実現。センサーなども活用し、多数の凹みを設けたプレートへの塗布位置精度を向上。改良により、作製した細胞培養プレートでiPS心筋細胞の拍動を検出することに成功した。

 細胞の電気的な活動を測るために使う多電極アレイ上へのiPS心筋細胞の精密塗布による細胞外電位の検出実験では、均一な細胞密度で、塗布全電極で安定した信号を検出。プレート上へのiPS心筋細胞の塗布による薬剤評価実験では、正確で再現性の高い薬剤反応の測定ができるだけでなく、細胞への負荷を抑える塗布方法により高い細胞生存率を確保。必要な量だけを正確に塗布することで細胞使用量を約80%削減することにも成功した。

 装置の開発完了は来年春を予定する。同社要素技術開発部ライフサイエンスグループの大庭博明主査は「再生医療への応用に期待できる」と話した。