2023.01.12 【計測器総合特集】 チノー 豊田三喜男社長

豊田 社長

販売と開発連携、企業価値高める

 チノーの2022年は、上期に中国での都市封鎖の影響があったが、製造業や脱炭素関係の旺盛な設備投資で受注は好調に推移した。豊田三喜男社長は「納期が1~2年先の前倒し発注もあった」と話す。

 受注残は例年の2倍程度の規模まで膨らんだものの、部材不足の問題を教訓に、地政学的なリスクも考慮しながら、生産フローの最適化を今後の課題に挙げる。

 中国向けは前年度に続き、「1年を通して見れば過去最高水準」となる見込みだ。ロックダウンの影響で売り上げが立たない時期もあったが、販社が現地企業や日系企業のニーズを聞いて解決を目指す営業戦略が功を奏した。

 半導体や電子部品など、社会のDX化や脱炭素化に向けた投資は活発で、同社の評価試験装置や試験システムは堅調。装置メーカーに対するセンサー需要も多かった。

 EV(電気自動車)などの電動化に当たっては「素材の軽量化などのイノベーションに対しては温度計測が欠かせず、当社の機器やセンサーが貢献できた」と豊田社長は自信を口にする。

 インド市場では人工ダイヤモンドの生産工程で用いられる放射温度計が引き続き好調だ。現地での水平展開も探りながら、事業拡大を狙う。

 脱炭素領域での市場の広がりに対する期待は大きい。水素社会の実現に向けた燃料電池の研究開発では電力容量の大型化が進展。温湿度や圧力、冷却水流量などを制御する評価試験装置を提供する。ニーズの変化をつかむために「顧客密着の活動が一層大事になる」(豊田社長)。

 創立90周年を迎える26年を最終年度とする中期経営計画では「コア事業の高度化と価値創造」を基本戦略の一つに据えた。販売と開発が連携して企業価値を高める取り組みで、市場ニーズを得た営業部門からの提案を起点にして迅速な製品開発につながるなど、早くも手応えを感じている。人材育成への投資も進める。

 昨年4月、東証プライム市場に移行。IR施策の効果もあり、個人投資家は移行前に比べて約20%増加した。今後も産業での温度計測の不可欠性をステークホルダーに発信していく。