2023.07.26 日本の半導体復権へ シンポジウムで議論活発 阪大などが企画、大阪で200人が参加

活発に意見が交わされた会場

 ラピダスを契機に、半導体産業の復権を議論する動きも活発だ。そんな一つ、半導体産業のこれからを考えるシンポジウムが先月、大阪府高槻市内であった際は、さまざまな意見が交わされた(既報)。特に経営論や技術の新機軸も注目された

 大阪大学などが企画し、産官学の関係者など約200人が参加。うち、前東京エレクトロン会長の常石哲男氏は、装置面で半導体を支えてきた知見から提起した。半導体生産の地域別シェアでかつてはトップだった日本が落ち、米国の盛り返しやアジアの勃興が見られる現状を指摘。日本の衰退の要因として次のようなものが考えられるとした。

 ▽日米半導体協定▽売上高の規模やシェア拡大に重点を置き過ぎた▽選択と集中に欠けていた▽総合電機メーカーの一事業部門で、多大な設備投資や開発費に耐えられなかった▽大胆な成長戦略の覚悟がなかったなどだ。ただ、常石氏はそれらも踏まえつつ、根本の要因としてワールドクラスが要求されるグローバル競争力の根幹と、世界で戦える土壌の課題を指摘した。

 つまり「世界の戦いに勝てる本質は、世界で戦える環境という土壌の上に、社員の『夢と活力』があること」との経営論を示した。

 一方、別の立場から構想を示したのは、ノーベル賞学者でもある天野浩・名古屋大教授。日米半導体摩擦が、ある種の「トラウマ」になり得るとの立場から、米国一辺倒への懸念も指摘、2030年以降の日本に向けて、エネルギーの自立が最大の課題とした。

 その上で、縦型のGaNトランジスタに取り組んでいることを詳説。豊田合成が社会実装の準備を進めていることを明らかにした。

 天野氏はさらに、現在のベテラン研究者・技術者層から、いずれ若手層にバトンタッチされることを強調。特に自らの体験も踏まえ、30~40歳代前後で最も充実した研究開発ができる可能性を示し、エールを送った。