2020.08.07 【5Gがくる】<7>4K/8K映像が切り開くニューノーマル②

 織田信長が新たな社会を切り開くことができたのは、鉄砲による武力だけではなく、『楽市楽座』という、いわばニューノーマル(新しい日常)な経済政策をしたから、と言われている。寺社の境内や門前に限られていた当時の〝市〟は、店を開くに当たって〝座〟と呼ばれる同業者組合を介して場所代を寺社に支払わなければならなかった。信長はこれを撤廃し、誰でも、どこでも商売できるように市場を開放した。

切り札として期待

 ローカル5Gは、この『楽市楽座』に似ている。通信事業者による全国向け5Gサービスとは別に、誰でも、どこでも個別の課題解決やニーズに応じたユーザー密着型サービスを始めることができ、加えて通信料もかからないからだ。

 その切り札として期待されているのが、高精細4K/8K映像サービスだ。

 では4K/8K映像サービスが実現できるローカル5Gを始めるにはどうすればよいのだろうか?

 マイクロ波やミリ波の電波を利用するローカル5Gは、当面「自己の建物内」または「自己の土地内」での利用を基本としている。そのため、建物や土地の所有者、あるいは所有者から依頼を受けた者が、電波を発射する無線設備(アンテナなど)である無線局の免許を申請し、審査などを経て免許が交付されれば、自前の基地局の運用を開始できる。

 ただし、他者の建物や土地をまたいで電波を利用することはできない。たとえば、同じ工場や病院の棟と棟の間に公道がある場合や、事業場やキャンパスの散在するビルの間に他社ビルがある場合には、公道や他社ビルを越えて電波を飛ばすことはできない。

 その場合には、光回線などの固定回線を利用することになっている。もちろん、自己の土地内にある複数の基地局同士を光回線でつなぐケースも少なくない。

面・線・点のサービス

 4K/8K映像を活用したローカル5Gサービスでは、一つはスタジアム内の多数の移動カメラ(ドローンによる空撮も含む)からのリアルタイム映像を配信する、エリア(面)で提供するサービスがある。

スマートスタジアム

 また、列車内のタブレットやスマートフォンへ窓外の観光地映像を配信するなど、決められたルート(線)で提供するものもある。 前回取り上げた遠隔会議や遠隔教育、遠隔医療、機械の遠隔操作では、自宅や診療所、工場、工事現場の映像を、サーバーを介して離れた場所へ配信するという、ポイント(点)で提供するものもある。

 いずれにしても、4K/8K映像を劣化させることなく高品質のまま遠隔地へ送信するには、無線区間(ローカル5G)と有線区間(光回線)を含めたエンドツーエンドの超高速・低遅延ネットワーク環境の構築が必要となってくる。

 これについては次回、解説する。(つづく)

<筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問・国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏>